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 平成16年版 犯罪白書 第2編/第6章/第2節/2 

2 逃亡犯罪人の引渡し

(1) 犯罪人引渡しに関する国際協力

 我が国は,外国から犯罪人の引渡しの請求を受けた場合,逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律第68号)が定める要件及び手続に基づき,当該外国との間に引渡条約を締結していない場合でも,相互主義の保証の下で,その引渡請求に応ずることができるとされている。また,これによって我が国が広く外国に対して相互主義の保証を行うことが可能となり,外国からも逃亡犯罪人の引渡しを受けることができるようになっている。しかしながら,国によっては,条約の存在を引渡しの要件とするいわゆる条約前置主義を採っている国もあり,これらの国の中には,犯罪人の引渡しを刑事司法における国際協力の重要な課題とする現在の国際社会の要請にこたえて,引渡しの妨げとなるこの主義を廃止した国もあるが,これを維持しつつ,二国間の引渡条約を多数国との間で締結している国もある。近時採択された多数国間条約では,各国の制度の相違を前提とした上で,一定の行為等を犯罪化し,その犯人が刑事手続を免れることのないよう,各締約国に対し裁判権を設定すること及びかかる犯罪を引渡犯罪とすることを義務付けた上で,犯人を関係国に引き渡すか,又は訴追のため自国の権限ある当局に事件を付託するかの,いずれかを行うことを義務付け,締約国間の国際協力につき一層の進展を図っている。
 我が国は,昭和53年,米国との間で,日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約に署名し,55年3月から効力が生じており,さらに,平成14年4月,韓国との間で,犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約に署名し,同条約は,同年6月から効力を生じている。これらの条約は,一定の要件の下に犯罪人の引渡しを相互に義務付けているほか,逃亡犯罪人引渡法では原則として禁止されている自国民の引渡しを,被要請国の裁量により行うことを認めることによって,締約国との間の国際協力の強化を図っている。

(2) 我が国からの外国に対する逃亡犯罪人引渡し請求

 我が国が,引渡条約を締結していない外国に対し犯罪人の引渡しを求める場合,その要件及び手続は,相手国の国内法令に従うこととなる。その場合,逃亡犯罪人の身柄を確保する手段として,外交ルートによって相手国に犯罪人の引渡しを要請することとなる。これには検察庁が依頼する場合と警察等が依頼する場合とがあり,いずれも外務省を経由して引渡請求が相手国に伝えられる。
 最近10年間に,我が国が外国から引渡しを受けた逃亡犯罪人は,2-6-2-4表のとおりである。その内訳は,平成6年にブラジルから1件1人,12年にタイから1件1人,14年に米国から1件1人,15年に米国から1件1人及び韓国から1件1人である(法務省刑事局及び警察庁刑事局の資料による。)。

(3) 外国からの我が国に対する逃亡犯罪人引渡し請求

 最近10年間に,我が国が外国に引き渡した逃亡犯罪人は,2-6-2-4表のとおりである。

2-6-2-4表 逃亡犯罪人引渡し人員