前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/3 

3 窃盗の動向

(1) 概要

 1-1-1-8図は,窃盗の認知件数,検挙件数,検挙人員及び検挙率の推移を過去30年間にわたって見たものである。窃盗は,認知件数の急増,検挙率の急落という傾向がここしばらく続いていたが,平成14年以降その傾向に変化が見られる。
 認知件数は,平成10年から14年まで毎年,対前年比約12万件,12万件,22万件,21万件,3万7,000件の増加を続けてきたが,15年は,9年ぶりに減少を示し,対前年比14万1,644件(6.0%)減の223万5,844件であった。また,検挙件数が2年連続して増加した結果,検挙率も同様に回復し,15年は19.4%となった。
 治安情勢を観察する際に一つの指標とされる重要窃盗犯(侵入盗,すり,ひったくり及び自動車盗をいう。)について見ると,平成15年の認知件数は,対前年比9,328件(1.9%)減の46万9,148件であり,窃盗全体に占める比率は21.0%であった。この比率は,平成期を通じて18〜21%前後で推移しており,著しい変化はない。15年における重要窃盗犯の検挙率は,30.0%と窃盗全体よりも高く,また,14年の28.0%よりも2.0ポイント回復している(警察庁の統計による。)。

1-1-1-8図 窃盗の認知件数・検挙件数・検挙人員・検挙率の推移

(2) 種類別及び手口別の動向

 過去30年間における窃盗の認知件数の推移を,侵入盗,非侵入盗及び乗物盗という種類別に見ると,1-1-1-9図のとおりである。また,平成15年における窃盗の認知件数を手口別に見ると,その構成比は1-1-1-10図のとおりである。

1-1-1-9図 窃盗の種類別認知件数の推移

1-1-1-10図 窃盗の手口別認知件数構成比

 侵入盗は,平成10年以降増加を続けていたが,15年は6年ぶりに減少し,対前年比5,061件(1.5%)減の33万3,233件となった。ただし,これは,過去30年間で,14年に次いで2番目に多い件数であり,なお高い水準にある。
 侵入盗のうち,ピッキング用具を使用した事案の認知件数は,全国的統計の存在する平成12年以降,2万9,211件(12年),1万9,568件(13年),1万9,121件(14年)と推移していたが,15年は大幅に減少し,9,351件であった。しかしながら,これに代わって,サムターン回し(ドリル等で出入口ドアに穴を開けて器具を挿入し,サムターン(錠のかんぬきを開閉させるためのつまみ)を回転させて開錠する侵入手口)による侵入盗や,携帯用バーナー,ライター等の燃焼用具を使用し,ガラスを焼き切って侵入する手口が目立つようになった。15年におけるサムターン回しによる侵入盗の認知件数は4,366件(対前年比3,526件増),燃焼用具利用による侵入盗の認知件数は5,585件(対前年比4,096件増)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
 非侵入盗も平成3年以降増加を続けていたが,15年は13年ぶりに減少し,対前年比5万6,939件(4.5%)減の120万6,820件となった。ただし,これは,平成14年,13年に次いで,過去3番目の件数であり,侵入盗同様,なお高い水準にある。非侵入盗のうち,重要窃盗犯とされるすり及びひったくりについて,最近30年間における認知件数の推移を見ると,1-1-1-11図のとおりである。

1-1-1-11図 すり・ひったくりの認知件数の推移

 すりは,平成元年以降,おおむね2万件から3万件の間で増減しており,昭和49年と平成15年の認知件数に大きな差は認められない。これに対し,ひったくりは,昭和期を通じて徐々に増加した後,平成に入って急増し,最近はすりを大幅に上回っている。熟練を必要とするすりと比較すると,ひったくりは,より手っ取り早く荒っぽい犯行手口であり,ひったくりの認知件数の急増は,近年における強盗(取り分け路上強盗)の増加と同様の傾向を示している。なお,15年におけるひったくりの認知件数は4万6,354件で,前年よりも6,565件減少しているが,これは警察による街頭犯罪対策などが効果を上げているものと考えられる。
 平成15年における乗物盗は,前年に続いて減少し,69万5,791件(対前年比7万9,644件減)となった。その内訳を見ると,オートバイ盗及び自転車盗が大きく減少し(それぞれ4万3,663件,3万7,531件の減少),自動車盗は微増(1,550件の増加)した。
 以上のほか,特殊な手口によるものとして,建設機械等を使用して現金自動預払機(ATM)等を収納ブースごと破壊した上,現金を盗もうとする悪質な犯行が多発している。警察庁刑事局の資料によれば,この種の事案は,平成13年は9件,14年は57件,15年は44件発生している(いずれも未遂を含む。)。