前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成15年版 犯罪白書 第5編/第7章/第2節/2 

2 検挙・捜査面での対策と課題

 殺人,強盗といった凶悪犯罪に対しては,被害者のためにも,また,同種事犯の再発を防止して市民生活の安全を守るためにも,迅速・的確な犯罪者の検挙と事案の真相の解明が必要不可欠である。そして,そのためには,科学的捜査手法を含むあらゆる捜査手法を活用した適正かつ徹底的な捜査を行っていくことが何よりも肝要であるが,ここでは,最近の凶悪犯罪の変貌にかんがみ,少年犯罪対策,暴力団と外国人犯罪対策,窃盗対策について述べることとする。

(1) 少年犯罪対策

 精神的に未熟で規範意識も希薄な少年は,安易に重大な犯罪を行う場合があるが,可塑性に富むため,早期に的確に対処すれば再犯への道を封ずることが可能である。迅速・的確な検挙はもとよりのこと,少年が犯罪に至った動機,その原因・背景,行為態様,共犯関係,被害感情等につき十分な証拠収集等を行い,家裁・矯正・保護に十分な情報(判断材料)を提供し,的確な処分と処遇に資するような捜査活動を行うことが,当該少年に犯行の重大性を認識させ,被害者と同じ社会の一員であるとの自覚を促して更生の意欲を高めるとともに,模倣性を遮断させて他の少年による同種犯行を防止する犯罪対策につながるはずである。

(2) 暴力団と外国人犯罪対策

 暴力団関係者に対しては,徹底した検挙・捜査はもとより組織自体に打撃を加えることを考慮しなければならない。銃器等の取締りとともに,資金源犯罪に係る収益剥奪等組織犯罪対策関係立法により設けられた新たな手法等を活用して組織を弱体化させる一方,検挙された者に組織からの離脱を働き掛けその保護を図ることが重要となろう。
 来日外国人犯罪者には,元々正規の就労をしていながら不況の影響で失職し,経済的苦境に陥って犯行に及んだ者と不法入国者ないしは犯罪目的で入国した者とがあり,いずれの者によるにせよ,その凶悪犯罪に対して厳正に対処すべきはいうまでもないが,取り分け後者にあっては,特に暴力団と連携した強窃盗団等組織的背景を有する者に対しては背後関係を含めた事案の真相を徹底的に解明することが肝要である。そのために,関係するあらゆる情報の集積と共有化を図り,その分析と活用を行うことが望まれる。また不法入国者等については,水際で阻止する態勢等を更に充実・強化することが重要である。

(3) 窃盗対策の重要性

 強盗へとつながる可能性の高い暴力的な窃盗の検挙の強化が,強盗の増加の阻止・減少に密接な関連を有している。路上でのひったくり窃盗,特に自転車等に乗っている者をターゲットにした事例は被害者に重傷を負わせる危険も高く,重機を利用したATM盗や事務所から大型金庫ごと奪取するようないわば荒っぽい犯罪も,被害者に発見・抵抗された場合には暴力で応じて強盗へと転じる危険性も高い。侵入のための破壊用具や凶器を携帯して行われる常習的な窃盗犯による侵入窃盗や多数で相手を制圧する意図を潜在させている窃盗団による犯行も強盗へ移行する危険性がある。こういった窃盗を集中的かつ徹底的に検挙することが強盗という凶悪犯罪を未然に防止し,被害の拡大を食い止める一つの効果的方策となると思われる。