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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第7章/第1節/1 

1 少年を中心とした路上強盗の増加

 近年,少年を中心とする路上強盗の増加傾向が著しい。動機は遊興費充当等安直なものが大半であり,犯行形態としては共犯ないし集団で,夜間,特に深夜行う傾向が強い。それに加えて,金品強取自体よりも共犯者の目を意識して犯行に加担する者も少なくない上,集団心理や相互牽制から次第に犯行態様をエスカレートしていく傾向がうかがえるなど特異な実相が認められる。路上強盗の増加は,コンビニエンスストアを始めとする深夜営業の店舗や飲食店が増加して,一般市民が深夜でも外出するようになり,深夜徘徊をする非行少年等のターゲットとされることが多くなったことに一因があるが,それに加えて,少年犯罪に特有の背景事情が加わって相乗効果で増加したもののように思われる。少年犯罪全般に通じるその背景要因としては,まず,家庭の指導力の低下等が挙げられる。両親がそろっている家庭の割合が高いにもかかわらず,半数以上が家族と不和・家族から疎外・情緒的交流なし等深刻な問題を抱えており,一方で,保護者は,放任,言いなり,一貫性なし等指導力が欠けているものが多く,強盗少年の多くの家庭が少年を犯罪に走らせないように指導する力を喪失ないし低下させているという状況にある。次に,在籍はしているが不登校や学校不適応が多く,学校生活から離脱,あるいは中退するものも少なくないという問題がある。また,不況のため青少年の失業率は高く,高校中退ばかりでなく中学校・高校を卒業しても就業が困難であるなどの事情に,青少年の就業意欲の低下等も加わり,無職少年が増加傾向にあることや,仲間の目を気にする一方で,社会への帰属意識や弱い者への共感性を欠き,暴力肯定的傾向や世間に対する投げやりな気持ちを有するなど,少年の意識の変化も軽視し得ない要因である。
 家庭や学校から離脱し,社会にも行き場がない閉塞された環境の下で,精神を荒廃させた少年が,深夜の路上等を徘徊し,罪の意識もなく,仲間に誘われるまま,手っ取り早く金品を手にするため強盗を行い,犯行をエスカレートさせて被害者を負傷させているという図式の存在がうかがわれる。
 そして,少年の路上強盗の増加傾向が成人にも広がり,最近においては成人の路上強盗の増加傾向も強まっている。模倣性の強い路上強盗に対する早急な対処をしなければ,少年の路上強盗の増加を阻止できない上に,成人の路上強盗の増加傾向も強まっていくのではないかと危惧されるところである。