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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第5章/第2節/4 

4 犯行の広域化

(1) 国内での広域移動

 世帯当たりの乗用車普及率は80%を超え,高速道路を始めとする道路網も整備され,その他の交通網も一段と発展を遂げたことから,国民の仕事ないしレジャーでの国内移動は広域化・高速化しつつある。そのような時代背景を反映して,凶悪犯罪の中には車で複数の地域を移動しつつ犯行を継続する,あるいは犯行を繰り返す事案が現れてきている。
 本件の調査対象事件中には,複数の都道府県で凶悪犯罪を行った事例が17件あり,車両等を用いて移動しつつ犯罪を行う事例が21件認められており,凶悪犯罪が犯罪者の居住する地域のみならず他の地域へも拡大していることがうかがわれる。

(2) 海外との関係

 国民の海外渡航も年を追って盛んになっているが,重大事犯においても海外で犯行の準備行為等を行うものが登場するようになってきている。本件調査対象事件中にも,海外でけん銃の試射等強盗の準備を行った事例,犯行に使用し死体を隠匿した車両をプレスして金属屑として海外に輸出し,犯行を隠ぺいした事例があった。海外の国の中には我が国と犯罪情勢や銃器取締り等のシステムが異なる国もあることから,今後も同様な事例や犯行場所を海外に移した事例が増えることも予想され,留意を要する。