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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第5章/第1節 

第5章 特別調査−重大な凶悪事犯の近年の動向−

第1節 特別調査の目的と方法

 凶悪犯罪の変貌(特質の変化)の概要については第3章で,また,その中でも特に増加の著しい少年強盗事犯の問題性については第4章で分析した。本章においては,死刑・無期懲役という最も重い刑を求刑された殺人又は強盗の事犯(以下「重大事犯」という。)に関する特別調査結果に基づき,いくつかの類型を紹介しつつ,その実情ないし近年の動向を分析することとする。
 これらの重大事犯は,件数的には凶悪犯罪のごく一部に過ぎないが,前章までに分析した特徴と変化,そして問題性が色濃く投影され,しかも集約的に現れている場合が少なくない。また,概況を見ているだけでは把握しにくい重大な犯罪現象や問題点が鮮明な形で浮かび上がってくる場合もあるので,このような分析は,凶悪犯罪の全貌を把握する上でも有益であると考えられる。加えて,近年発生した凶悪犯罪のうち,最も重い求刑の対象となった重大事犯については,報道等を通じて国民の注目を集めることが多いだけに,どのような特徴が現れているのかを国民に伝えることは,それ自体,十分に意味のあることだと思われる。
 上記目的のもとに,平成10年1月1日から同14年12月31日までの5年間に,全国の地方裁判所において,死刑又は無期懲役の求刑がなされた凶悪犯罪のうち,第一審判決が,上記期間内になされた全事案(但し,近時の動向を検証するという目的から,殺人ないし強盗の犯行が平成4年1月1日以降になされたものに限定。)について,判決書等の資料に基づき,行為者の属性,動機・背景,犯行態様,結果,隠滅工作,公判での態度等多数の観点から多角的な調査を行った上,殺人群と強盗群(強盗殺人・強盗致死傷・強盗・強盗強姦のいずれかを行った者を強盗群,それ以外は殺人群とした。)に分類してこれを分析した。調査対象とした事件数・被告人数は,5―5―1―1表のとおりである。

5―5―1―1表 重大事犯特別調査対象数