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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第4章/第3節/2 

2 小括

 以上の問題性にかんがみると,何よりもまず,少年に強盗という犯罪の重大性を認識させる必要があると思われる。そのためには,強盗事犯少年を厳しく取り締まることはもとより,被害者と同じ社会の一員であるとの自覚を芽生えさせることが不可欠である。さらに,少年を放置する家庭の問題は重要である。法務総合研究所における児童虐待に関する調査研究では,少年院在院者の過半数が家庭で身体的暴力等の被害を受けた経験があるとの結果が得られており,虐待が家庭を離れさせて非行に走りやすくさせるという素地を形成することが示唆されている。このことからも明らかなように,非行の芽を芽生えさせるのもまた摘み取るのも家庭であることを念頭に置きながら,家族関係や親子関係を見つめ直して家庭の機能の強化を図り,将来に対する希望や目標を少年に抱かせ,目先の充足感を追い求めようとする風潮を阻止するための保護環境の整備作りが求められている。
 要は,刑事司法関係諸機関のみならず,保護者を始めとする家庭,学校,職場,地域社会等,少年を取り巻く社会全体が,少年に対して彼らが掛けがえのない社会の構成員であること,さらに,将来の社会を担うのは彼ら自身であるといった意識を育んでいくことが,強盗事犯を始めとする少年犯罪の増加を阻止するための一つの大きな原動力になるのではないかと思われる。