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 平成15年版 犯罪白書 第2編/第6章 

第6章 刑事司法における国際協力

 本章では,刑事司法における国際的な取組の動向,犯罪者の国外逃亡と逃亡犯罪人の引渡し,捜査・司法に関する国際共助等について概観する。
 最近の我が国の犯罪情勢を見ると,外国を犯罪地とする犯罪の増加など犯罪そのものの国際化現象と,来日外国人による犯罪が増加するなどの犯罪者の面での国際化現象とが見られる。このため,国外に存在する証拠の収集,逃亡犯罪人の身柄確保及びその引渡し等,捜査及び裁判の分野において国際協力を要する事例が相当数発生しており,これに応じて諸外国との間の協力関係が進展している。
 また,国際的な麻薬取引,テロ,国際犯罪組織による組織的事犯に適切に対処するためには国際協力が不可欠であり,国際連合や主要国首脳会議等において,国際協力の強化に向けた取組が展開されており,近年では,法執行のための国際協力にとどまらず,各国の刑事司法を制度面でも調和させるための国際的なスタンダード(必ずしも条約などの法規範に限らない。)策定に向けての国際協力が積極的に進められている。
 この背景事情としては,経済・社会のグローバリゼーションにより,情報通信技術や輸送手段の発展に支えられて人・物・金銭・情報の国際的な移動が容易になり,これによって犯罪そのものの国際化がもたらされたことが挙げられる。例えば,犯罪者・銃器・麻薬等の国境を越える移動や外国の共犯者との通謀等が容易になされるだけでなく,犯罪収益をも瞬時に国境を越えて移動させ,いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)をすることも可能となり,また,いわゆるサイバー犯罪に至ってはインターネット上の国境なきサイバースペースを利用して犯罪が敢行されることとなった。このようなグローバル化する現代犯罪に対して実効的な規制を図るためには,特定の国が自国内の犯罪対策を行うだけでは足りず,世界から規制の緩い国・地域をなくして犯罪者に安寧の地を与えないようにしなければならないという認識の下で,1990年代に入り国際連合や主要国首脳会議を含む各種の国際フォーラムにおいて刑事司法の制度面での調和に向けての国際協力が推進されてきている。