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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第5章/第7節/2 

2 犯罪者の国外逃亡と逃亡犯罪人の引渡し

(1) 犯罪者の国外逃亡

 日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡した被疑者の数について,最近10年間の推移を見たのがIV-81図である。国外逃亡被疑者数は,平成9年以降増加し,12年には517人(前年比12.4%増)となっている。これを国籍(地域を含む。)別に見ると,中国が208人(総数の40.2%)で最も多く,次いで,日本111人(同21.5%),韓国・朝鮮35人(同6.8%),ブラジル27人(同5.2%),イラン19人(同3.7%),タイ18人(同3.5%)等となっている。

IV-81図 国外逃亡被疑者数の推移

 平成12年の国外逃亡被疑者を罪種別に見ると,刑法犯の被疑者396人(うち,日本国籍78人)の内訳は,凶悪犯(ここでは,殺人,強盗,放火及び強姦をいう。)が143人(同18人)で最も多く,以下,窃盗犯133人(同10人),知能犯(ここでは,詐欺,横領,偽造,贈収賄及び背任をいう。)76人(同43人),粗暴犯(ここでは,暴行,傷害,脅迫,恐喝及び凶器準備集合をいう。)14人(同3人)等となっている。また,特別法犯の被疑者121人(同33人)の内訳は,薬物関係事犯(ここでは,覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反,あへん法及び大麻取締法違反をいう。)が56人(同19人)で最も多く,次いで,入管法違反26人(同1人),銃刀法違反5人(同1人)等となっている。
 平成12年の国外逃亡被疑者について,その推定逃亡先国(地域を含む。)を被疑者数の多い順に見ると,中国111人(うち,日本人被疑者8人),フィリピン35人(同24人),韓国・朝鮮26人(同4人),アメリカ17人(同16人)等となっている(警察庁刑事局の資料による。)。

(2) 逃亡犯罪人の引渡し

ア 我が国からの外国に対する逃亡犯罪人引渡し請求
 我が国が外国に対し犯罪人の引渡しを求める場合,その要件や手続は,相手国の国内法令に従うこととなる。その場合,逃亡犯罪人の身柄を確保する手段として,外交ルートにより犯罪人の引渡しを相手国に要請することとなる。これには検察庁が依頼する場合と警察等が依頼する場合があり,いずれも,外務省を経由して引渡し請求が相手国に伝えられる。また,これとは別に,逃亡犯罪人の任意の帰国や外国当局による退去強制によりその身柄が確保できる場合もある。
 犯罪人の引渡しに関しては,二国間条約を締結し,これに基づいて引渡しを行うという方法もあるが,我が国が締結している二国間条約は,日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約だけであり,同条約は,一定の要件の下に両国に対し相互に犯罪人を引き渡すことを義務づけている。なお,平成12年9月に,韓国との逃亡犯罪人引渡条約についての交渉が開始された。
 最近10年間に,我が国が外国から引渡しを受けた逃亡犯罪人は,IV-57表のとおりである。その内訳は,平成3年にオーストラリアから1件1人,4年にイタリアから1件1人,5年にアメリカから2件2人,6年にブラジルから1件1人,12年にタイから1件1人となっている(法務省刑事局及び警察庁長官官房国際部の資料による。)。

IV-57表 逃亡犯罪人引渡し人員

イ 外国からの我が国に対する逃亡犯罪人引渡し請求
 外国から我が国に対し外交ルートにより逃亡犯罪人の引渡しの請求があった場合の要件や手続を定めているのが,逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律第68号)である。
 最近10年間に,我が国が外国に引き渡した逃亡犯罪人は,IV-57表のとおりである。平成12年については,アメリカから1件1人,イタリアから2件2人の引渡請求があったが,2件について12年度中に身柄の引渡しを完了している。(法務省刑事局の資料による。)。