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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第5章/第5節/6 

6 まとめ

 今回の調査結果の概要をまとめると,次のとおりである。

(1) 調査対象者の基本的属性

 出身地域では,アジア地域及び南アメリカ地域でほとんどを占めており,国籍ではブラジル,ヴィエトナム,中国の順となっている。これを事件の種別に見ると,保護観察処分少年では南アメリカ地域,仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者ではアジア地域がそれぞれ多い。
 一般群と比較すると,調査対象者では,[1]居住地が関東及び中部の者,[2]事件の種別が保護観察処分少年及び少年院仮退院者,[3]教育程度が,義務教育未了者及び大学進学歴のある者の割合が,それぞれ高くなっている。

(2) 来日後の状況

 家族そろって来日又は家族と同居する目的で来日し,来日後10年以上経過している者が多く,来日した際の在留資格は,定住者,日本人の配偶者等,永住者が多くなっている。
 来日後の薬物等使用歴及び不良集団関係では,一般群と比較すると,全体としては同程度以下の関与であったが,特に「あへん・大麻・麻薬等」及び「地域不良集団」の割合が高くなっている。

(3) 本件犯罪・非行の状況

 罪名・非行名では,窃盗が約半数を占めているものの,一般群と比較して差異は認められない。共犯者については,本人と同国の者が多く,被害者については,日本人で,本人と面識のない者が多くなっている。

(4) 保護観察の実施状況

 保護観察開始時には,日本語以外の言語を使用して誓約書を作成しているものが約30%見られ,また保護観察付き執行猶予者のA分類率は,一般群と比較して高くなっている。
 保護観察開始時に日本語が「できない」と評価された者が約26%見られ,保護観察処遇に当たっては,裁判所等の関係機関や,日本語のできる親族又は知人等を活用して,通訳人を確保している。
 保護観察開始時にはほぼ半数いた無職者が,保護観察終了時には半減しており,多くの者が保護観察期間中に就労していることがうかがえる。
 保護観察処遇上特に,言葉の問題,就労・収入上の問題,生活実態の把握の問題等が多く発生し,かつ外国人保護観察対象者特有の問題点として認識されている。これらの問題に対して,保護観察官及び保護司の担当方法を考慮したり,各種の社会資源を活用するなどして,工夫していることが分かった。

(5) 調査対象者の成り行き

 保護観察の終了事由について,一般群と比較すると,良好措置である解除及び退院が執られる割合が低く,不良措置である執行猶予取消しが執られる割合が高い。また,再犯・再非行のあった者の比率も,一般群と比較してやや高くなっている。