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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第3章/第3節/4 

4 フランス

(1) 交通現況

 1990年から1999年までの間のフランスにおける交通事故の発生件数及び死傷者数は,IV-19表のとおりである。発生件数及び負傷者数は我が国の約3〜4割と少ないが,死亡者数は約1万人と我が国と大差がない(巻末資料IV-17参照)。

IV-19表 交通事故の発生件数及び死傷者数

(2) 法制

 フランスにおいては,交通犯罪に対しては,刑法(Code Penal),道路交通法(Code de la route)等により規制されている。
 また,刑罰は,刑罰の種類及び法定刑等によって
[1] 重罪(crime)〜無期又は10年以上30年以下の拘禁刑,罰金刑及び補充刑との併科
[2] 軽罪(delit)〜10年以下の拘禁刑,2万5,000フラン以上の罰金刑,代替刑等
[3] 違警罪(contravention)〜2万フラン以下の罰金刑又は代替刑で,第1級から第5級に分かれる。
の3種類に分類されるが,交通犯罪は,犯罪の分類としては軽罪ないし違警罪(前者は罰金刑のほかに拘禁刑もあり,軽罪裁判所に管轄があるのに対し,後者は罰金刑しかなく,管轄も違警罪裁判所にある。)に該当する。
 交通事故に対しては,刑法に規定する過失致死罪,過失傷害罪等の規定が適用される。過失致死罪は軽罪とされ,「不熟練,軽率,不注意若しくは怠慢によって,又は法律若しくは規則によって課される安全義務若しくは注意義務を怠り」,他人を死亡させた場合は,3年以下の拘禁刑又は30万フラン以下の罰金に処せられ,「法律又は規則によって課される安全義務又は注意義務を意図的に怠り」,他人を死亡させた場合は,5年以下の拘禁刑又は50万フラン以下の罰金に処せられる。いずれの場合も,事故時酒気帯び運転・酒酔い運転をしていた場合やひき逃げ等現場逃走の場合は刑が2倍に加重される。また,「不熟練,軽率,不注意若しくは怠慢によって,又は法律若しくは規則によって課される安全義務若しくは注意義務を怠り」,3月を超えて他人の完全労働不能の状態を引き起こす行為は,2年以下の拘禁刑又は20万フラン以下の罰金に処せられ,「法律又は規則によって課される安全義務若しくは注意義務を意図的に怠り」,3月を超えて他人の完全労働不能の状態を引き起こす行為は,3年以下の拘禁刑又は30万フラン以下の罰金に処せられる。いずれの場合も,事故時酒気帯び運転・酒酔い運転をしていた場合やひき逃げ等現場逃走の場合は刑が2倍に加重される。さらに,「法律又は規則によって課される安全義務若しくは注意義務を意図的に怠り」,3月以下,他人の完全労働不能の状態を引き起こす行為は,1年以下の拘禁刑又は10万フラン以下の罰金に処せられる。
 また,代替刑(peine de substitution)及び補充刑(peines complementaires)の制度が認められている。代替刑とは,軽罪について定められた拘禁刑及び罰金刑等に代えて,権利はく奪処分,権利制限処分又は公益奉仕労働(travail dinteret general:T.I.G.)を科すことができるというものである。補充刑は,重罪,軽罪について,主刑に付加して言い渡せる刑であり,交通犯罪に関する補充刑としては,[1]運転免許の取消し・停止,[2]車両の運転禁止,[3]公益奉仕労働,[4]車両の没収等がある。
 一方,道路交通における違反行為は,道路交通法により規制され,駐車違反,速度違反等は,第1級ないし第4級の違警罪,無免許運転の初犯等は第5級の違警罪,酒気帯び運転・酒酔い運転は軽罪(2年以下の拘禁及び3万フラン以下の罰金又はその一方だけの刑)とされている。
 第1級ないし第4級の違警罪については,我が国の反則通告制度と同様の反則金制度(amende forfaitaire)があり,反則金の納付によって,公訴権が消滅する。反則金額は,違警罪の級別に反則金額が定められており,反則金手続が適用となる違反行為に対しては,違反者に通告書及び支払票が交付され,違反者が反則金を支払った場合は,公訴権が消滅するが,違反者が反則金納付に異議がある場合は,その旨の申立てをすれば,刑事手続に移行し,検察官により,起訴(通常の手続又は略式手続)又は不起訴が決定されることになる。
 また,違反者が期限内に異議の申立てをせず,かつ,反則金を納付しなかった場合は,加算反則金(amende forfaitaire majoree)の納付義務を負う。違反者は,加算反則金に対しても異議の申立てを行うことができ,異議の申立てがなされた場合は,反則金に対する申立ての場合と同様に刑事手続に移行する。
 第5級違警罪とされる事件については,検察官により,違警罪裁判所(tribunal de police)に対し,通常の手続又は略式手続が採られる。略式手続が採られた場合は,裁判官は,刑の免除又は罰金刑の言渡しを内容とする略式命令(ordonnance penale)によって裁判をし,これに対し,検察官又は被告人から異議の申立て(opposition)があれば,事件は,通常の手続に従って違警罪裁判所の公判に付されることになる。また,軽罪とされる事件については,略式手続によることができず,軽罪裁判所(tribunal correctionnel)による通常手続によるとされている。
 IV-20表は,フランスにおける主要な交通犯罪に対する罰則等を示したものである。

IV-20表 主要な交通犯罪に対する罰則

(3) 処理状況

 IV-21表は,交通犯罪の有罪人員における1995年から1999年の状況を見たものである。

IV-21表 交通犯罪の有罪人員

 IV-43図は,フランスにおける1999年の交通犯罪(軽罪)についての科刑状況を見たものである。

IV-43図 交通犯罪(軽罪)の科刑状況