前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成12年版 犯罪白書 第6編/第4章/第3節/3 

3 まとめ

 本調査の結果を簡潔にまとめると,以下の各点を挙げることができる。
[1]企業倒産等をめぐる競売入札妨害により有罪に処せられた者(調査対象者)においては,40歳代の者が41.1%を占め,逆に,刑法犯による有罪人員全体では最も多い20歳代の者の構成比は5.6%にとどまるなど,全体に年齢層が高い。
[2]調査対象者のうち,前科を有する者の比率は73.4%であり,刑法犯による有罪人員全体(59.2%)と比較すると,前科を有する者の比率はかなり高い。
[3]調査対象者の職業では,会社役員・団体役員(46.8%),自営業者(22.6%)等,企業の経営者的立場にある者の構成比が高いが,全体に暴力団・右翼団体との関係を有する者が多く,これら企業の経営者的立場にある調査対象者においても,45.3%は暴力団・右翼団体と関係がある。
[4]調査対象事件において競売を申し立てられた企業の業種としては,建設業(28.8%)や不動産業(25.4%)が多く,資本金においては,我が国の全会社企業中ほぼ半数を占める1,000万円未満のものの構成比が11.9%にとどまるなど,相対的に資本金が高くなっている。一方,競売を申し立てた者としては,銀行(33.8%)が最も多い。
[5]調査対象事件の約8割において,暴力団・右翼団体関係者の関与が認められ,特に被告人自身が暴力団・右翼団体関係者である場合には,他の暴力団・右翼団体関係者をも関与させて,更に組織的に犯行を行う傾向があることがうかがえる。
[6]犯行の手口としては,全体に,担保物件に対して架空の賃借権等を主張するものが多いが,被告人自身が暴力団・右翼団体関係者であり,かつ,他にも暴力団・右翼団体関係者が関与しているという最も組織的関与の強い事案においては,担保物件の物理的占拠,暴力団・右翼団体の威力を示す物件の掲示・設置等や債務者に対する架空の債権を根拠としての債務者の財産管理の主張等の手口の比率が,他の事案より高くなっている。
[7]調査対象者中,競売入札妨害及びこれに関連する事件のみによって判決を言い渡された者における実刑率は21.5%であり,そのうち法律上執行猶予を付することができる者における実刑率は13.4%である。
[8]量刑においては,まず被告人自身と暴力団・右翼団体との関係が考慮され,その上で,事案全体における組織的関与の度合いが考慮されていることがうかがえる。