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 平成12年版 犯罪白書 第4編/第6章/第2節/2 

2 コンピュータ関連犯罪対策

 近年,我が国の経済・社会の諸分野において,コンピュータ・ネットワークが社会の基盤としての役割を果たすようになっている。このような状況を踏まえ,電気通信回線に接続しているコンピュータのうち,アクセス制御機能によりその利用を制限されているものに,不正にアクセスする行為を禁止・処罰することなどを目的として,平成11年8月,不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号)が制定され,同法の処罰規定は,12年2月に施行された。警察庁生活安全局の資料によると,同年6月30日現在における同法違反による検挙人員は7人である。
 なお,インターネット等を利用して,性的な行為を表す場面等の映像を見せる営業を規制するため,平成10年4月,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律が一部改正され,映像送信型性風俗特殊営業の規制及びその違反行為の処罰に関する規定の新設等が行われた。この処罰規定は,11年4月に施行されたが,同年内においては,同規定違反による検挙はなかった(警察庁生活安全局の資料による。)。
 このほか,平成11年5月,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)が制定され,インターネットを利用して不特定又は多数の者に対し児童ポルノを閲覧させる行為を含む児童ポルノの公然陳列に関する処罰規定が設けられた。同法は,同年11月に施行され,法務省刑事局の資料によると,同年内における同規定違反による検察庁新規受理人員は10人である。
 国際的な取組としては,1997年12月に開かれた主要国司法・内務閣僚級会合において,電気通信及びコンピュータ・システム濫用行為の適切な犯罪化や,いわゆるハイテク犯罪捜査を促進するための法制度の検討等を内容とする「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」が表明され,さらに,1998年のバーミンガム・サミットにおいて,同計画を実施することについて意見の一致をみた。同計画については,同年12月に行われた主要国司法・内務閣僚級ビデオ会議及び1999年10月に開かれた同閣僚級会合の場でフォローアップが行われ,ハイテク犯罪の行為者について,国境を越えて,その所在を探知して特定するための具体的な選択肢を専門家において策定することなどが指示された。
 一方,専門家レベルでの会合としては,1995年のハリファックス・サミットの議長声明を受けて国際組織犯罪対策に関する上級専門家会合が設置されており,同会合では,1996年のリヨン・サミットにおいて,国際組織犯罪対策に関する「40の勧告」を提出し,同サミットでこれが支持された。さらに,同勧告のうち,現代技術を濫用する犯罪への対処についての勧告を推進するため,ハイテク犯罪サブグループが設けられ,ハイテク犯罪の証拠となるデータの収集に関する国際協力の在り方等について,検討が続けられている。
 また,2000年5月には,主要国の政府及び産業界の各関係者により,ハイテク犯罪対策に関する初の政府・産業界合同会合が開催され,ハイテク犯罪に関する政府,産業界側共通の課題及びその解決手段について議論された。
 さらに,2000年7月に開催された九州・沖縄サミットにおいて,犯罪のない安全なサイバー空間を強化するため,関係国が協調するとともに,来年我が国で第2回の政府・産業界合同会合を開催することなど,政府と産業界とが一層対話を推進することが合意され,これらを盛り込んだ首脳コミュニケ及び「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」(IT憲章)が採択された。