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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第一章/三/3 

3 病院収容者の実態

 厚生省の統計によれば,昭和三七年中に全国の病院に入院した麻薬中毒者は,一,〇〇五人であって,前年比三三一人の増となっている。これを性別でみると,男七二・九%,女二七・一%であって,確認中毒者とおおむね同様の割合で入院していることとなっており,前年比では男子の入院率がやや増加している。
 原因動機別では,好奇心等のためが七九%,重い疾患によるもの一五・三%となっているが,これは精神的な不安,軽度の疾患から中毒化したと称する中毒者の数が前者に含まれた結果の数字である。
 中毒麻薬はへロインが七四・六%で,圧倒的に多い。
 経費の負担は,自費四五・五%,健康保険二二・七%,生活保護一一・九%,措置入院一〇・二%などであり,健保,措置が前年よりやや顕著に増加している。
 入院期間は,一週間以内一八・四%,二週間以内二一・五%,一か月以内二三・九%,三か月以内二四・六%,六か月以内七・七%,六か月以上三・九%で,全体の六割以上が一か月以内に退院したこととなっている。これを前年に比べると,一般に一か月以内の短期入院者が減少し,一か目をこえる者が増加してきていることは,十分ではないが,よろこばしい傾向であるといわなければならない。
 しかし昭和三七年中に,麻薬中毒者を五人以上収容した病院は全国でおずかに三〇病院にすぎず,また同年一二月末日現在の入院者総数が一四八人にすぎないという現実は,中毒者の実態をみてきたわれわれとして,いかに解釈したらよいのであろうか。前年末現在の入院者がわずか二三人にすぎなかったという事実と比較して,これをもってよしとする訳にはゆかないであろう。