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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第三章/五/2 

2 施設の整備

 収容少年の矯正教育の分野においては,分類処遇をその基盤とすることが最も有効適切であることは,つとに明らかにされている。そのためには,まず施設を分類して収容することが必要である。少年院には初等,中等,特別,医療の種別があり,少年の年齢,心身の著しい故障の有無,犯罪傾向の進度等によって,それぞれ相応した種別の施設に分類収容することになっているが,現状は施設数が少ないため,二種別以上の混合収容をしている施設が二六あり,はなはだしきは四種混合の施設さえある実情である。
 また近年一部の地域の少年院が,はなはだしい過剰収容の状況を呈したため,これらの地域の少年院において収容期間を短縮する傾向が現われ,これが全国的に波及して,昭和三〇年には一四・四月であった全国平均在院期間が,昭和三六年には一三月になっている。したがって,分類収容を可能ならしめるとともに,適正な在院期間を確保するために必要な少年院の施設を整備する対策が,早急に実現されなければならない。さらに,昭和四一年を頂点とする少年人口の増加に伴って予想される,少年犯罪の増加に対応する収容対策も,今日から考慮しておかなければならないのである。
 また現存の少年院の多くは,旧軍用施設や保護団体施設を転用したものであって,建物は既に老朽化しており,しかも少年矯正施設として適当な構造,体裁,設備を備えておらず,さらに致命的なことは,居室の充足に重点がかたより,教室,実習場,体育訓練場等の施設は,むしろ,ぜい沢視されてきたのであったが,しかし,これらの教育施設が整備されなければ,活発な教育活動を行なうにも,その場所がないありさまであるし,居室そのものについてみても,従来はほとんど雑居,それも一〇名を越す大雑居制が多く,ややもすれば,望ましくないインフォーマル・グループの発生と活動の原因をつくってきたようである。今日においては,小雑居制をとることと,さらに考査寮,懲戒寮とは別の意味をもった単独室の整備が急務とされている。