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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第三章/五/1 

五 少年院の問題点

1 職員の増員

 出院少年の再犯率が高いことから,一方的に少年院教育の効果が批判され,あるいは少年院の教育,処遇の未分化が論ぜられるのであるが,少年院はその開設の当初から,その機能を十分に発揮するに足りるだけの,職員数にめぐまれていない。
 職員は,少年の安寧を守り,秩序を維持し,事故を防止するという保安の領域を担当することに追われ,他の主要な教育の領域は,すべて保安要員の兼務,かけもちによって一時しのぎをしてきたというのが,いつわらざる実情である。しかもそれすら,連続の当直や,当直明けの非番日の終日居残り勤務によって,かろうじて維持されているので,週休はとれない場合の方が多く,一週間の勤務は拘束七四時間,実働六四時間におよんでいる。心身ともに疲労している職員が,教育のすべての領域にわたって,少年の特質に応じた適切な教育を実施するなどは,とうてい望みうべくもない。
 少年院の教育を効果あらしめるためには,職員の増員が何よりも優先してとりあげられなければならない理由は,実にここにある。