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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/9 

9 カウンセリング・心理療法

 最近矯正の新しい技術として,カウンセリングあるいは心理療法が,刑務所でもとりいれられるようになった。カウンセリングとは,自分自身では処置できないでいる個人的な問題に悩む受刑者が,そのような問題を解決できるように,訓練と経験とを積んだ専門家との話合いを通じて,その問題を自発的に解決し,よりよき適応性を獲得する過程を指し,心理療法は,その問題発生の原因が,心の内部にある機制のゆがみにあるような場合に,暗示,催眠,説得のような積極的な方法,あるいは全く指示をしない方法,あるいは心理劇による方法などな用いて,特殊の専門家が行なう治療方法をさしている。したがって,カウンセリングも心理療法も,専門家または特別訓練を受けた職員が行なうことが望ましいものであること,受刑者自身に解決しようとする問題意識ないし動機がなければならないこと,カウンセリングや心理療法を受けていることが,職員や仲間から疎外されたり,作業時間やその他の処遇に影響を与えないことなどの点に,実施上の問題が少なくない。そのために,いまだ試行の城を出ないが,少なくとも,実施したものについては,施設に対する適応の面では好ましい結果をもたらしているようである。現在カウンセリングあるいは心理療法を実施している施設は,三八施設に達しており,方法としては,個別面接法が中心で,集団面接法を併用している施設は七施設である。そのほか中野,名古屋,八王子医療刑務所など,数施設において,心理劇法,精神分析法,催眠療法など,高度の専門療法が併用されている。
 次に,もっとも活発にカウンセリングや心理療法を行なっている施設の例を紹介すると,たとえば,中野刑務所では,参加は,本人の希望によっているが,オリエンテーションが徹底したので,工場・舎房別等に一〇個の小集団(一集団の大きさは四-二〇人)を対象とするカウンセリングが専門家一四人と一般職員一〇人とによって行なわれ,全収容者の三分の二が,毎週一-六回参加している。そのほか,希望者には,個人あるいは二-四名の集団の形で,随時面接療法を行なっているばかりでなく(昭和三七年には,九六〇人が参加),音楽療法,絵画療法も試みられ,ほとんど全員がカウンセリングあるいは心理療法の恩恵に浴している。また,山口刑務所では,少年鑑別所の専門家の協力を得て,職員を三か月にわたって訓練した後,現在,四五名の職員が中心となって,全収容者に対し,毎週一回四〇分ずつの集団カウンセリングを実施し,さらに必要なものには,個別カウンセリングを随時行ない,所内処遇の効率化を図っている。すなわち,この施設における集団カウンセリングは,プワグラムとして組まれた強制的な方法(アグレッシブ・タイプ)であって,原則的な方法(自発的に参加するタイプ)とは異なるが,この方法が施設全体のあり方を,治療的なふんい気とするという意味で,全職員と全収容者との共通の理解のうえに立っているために,効果があげられていることを注目しなければならない。