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 平成 9年版 犯罪白書 第3編/第1章/第2節/1 

第2節 成長と安定の時代(昭和40年代から50年代)

1 概  況

 昭和40年代に入ると,我が国の驚異的な経済成長を背景に,人口の都市集中,交通事故の激増,公害問題などが発生するようになる。犯罪動向では,刑法犯の減少傾向が認められるが,引き続き少年犯罪及び少年非行が問題とされたほか,学生を主体とする過激な集団暴力事件が頻発したのは40年代前半のことである。40年代後半からは覚せい剤事犯の増加が始まり,50年代に入ると,技術革新などに伴う急激な社会変動と国民の価値観及び行動様式の変化が犯罪の規模と形態に変化をもたらし,車に関する窃盗等が増加した。また,覚せい剤事犯の急増,青少年の暴走族などによる新しい形態の集団暴力事犯等が世間の注目を集めたのも50年代前半のころである。
 昭和50年代後半からは,欧米諸国と対比してみても,犯罪の発生率も低く,おおむね良好な社会状況にあると評価される時期が続く。しかし,金融機関強盗及び通り魔的な殺人事件も発生し,少年非行の戦後第三のピークを迎えることとなる。また,豊かな社会における犯罪に注目が集まり,成人犯罪者の多くはその経済的条件,家庭的条件等も特段劣っているともいえない生活環境にあり,非行少年についても,かつて言われた,欠損家庭や経済的に恵まれない家庭の少年が多いという現象は薄れるという,いわゆる一般化の傾向がうかがえるとの指摘がなされたのも,このころのことである。
 この時期,刑法は,昭和43年及び55年の2回にわたって一部改正がなされ,前者においては業務上(重)過失致死傷罪の法定刑の引上げなどが,後者においては収賄罪等の法定刑の引上げが,それぞれなされている。また,46年には罰金等臨時措置法が一部改正されている。