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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 現行少年法の成立

 第二次世界大戦後,昭和20年代には,従来の諸法制が抜本的に改革された。非行少年の処遇制度及び刑事手続についても,当時,戦時中における不十分な教育と戦後の混乱によって少年犯罪が激増し,かつ,悪質化しつつあった情況下において,少年の健全育成の重要性にかんがみるとき,これを単なる一時的現象として看過することは許されないという刑事政策的見地と,新たに施行された日本国憲法が基本的人権の保障をうたっており,少年の自由を拘束する強制処分を含んだ保護処分を行政機関で行うことは適当でないと考えられたことなどから,23年7月に,(旧)少年法を全面的に改正した現行の少年法(昭和23年法律第168号)が公布され,24年1月から施行された。
 新しい少年法の主な改正点は,[1]少年法の適用年齢を18歳未満から20歳未満に引き上げたこと(実施は昭和26年1月。本節3参照),[2]地方裁判所と同格の司法機関である家庭裁判所を新たに設け,また,保護処分の種類を整理して保護観察,教護院又は養護施設送致及び少年院送致の3種類としたこと,[3]検察官先議を廃止し,すべての事件は,まず家庭裁判所に送致され(全件送致),家庭裁判所が保護処分にするか,刑事処分にするかを決定することとしたこと,[4]保護処分の決定と執行を分離し,裁判所が保護処分の決定をした後の執行は行政機関に一任することとしたこと,[5]少年の福祉を害する成人の刑事事件についても家庭裁判所の管轄としたこと,[6]保護処分に対し少年の側からの高等裁判所への抗告を認めたこと,[7]刑事処分を16歳以上の少年に残し,死刑と無期刑の言渡しの制限を犯行時16歳未満から同18歳未満に引き上げたことなどである。
 現行少年法の施行と同時に,少年院法(本章第3節2参照)が施行され,矯正院法は廃止された。現行少年法の規定によって,観護措置をとられた少年を送致する施設として,新たに少年観護所が設置され,少年の資質鑑別を行うための少年鑑別所が付置された。少年観護所と少年鑑別所は,その後に統合されて少年保護鑑別所となり,さらに,名称が変更されて少年鑑別所となった(本節3及び本編第7章第2節1参照)
 (旧)少年法下における少年審判所の常勤職員である少年保護司の制度は,その一部が家庭裁判所調査官制度として引き継がれ,家庭裁判所の発足当初は,少年保護司という名称がそのまま使われていたが,その後に少年調査官,更には家庭裁判所調査官と改称された。(本節3及び本編第7章第1節2参照)また,(旧)少年法においても人格調査の方法は採られていたが,現行少年法はこれを一層強化し,審判決定前の科学的調査を重視し,少年鑑別所や家庭裁判所調査官制度を設けたことが大きな特色の一つである。
 なお,(旧)少年法の少年保護司の観察は,昭和24年7月に施行された犯罪者予防更生法(本章第4節1参照)によって,保護観察所の保護観察に改められた。(本編第7章第3節2参照)
 一方,14歳未満の者の処遇については,昭和22年12月に公布(一部を除いて23年1月施行)された児童福祉法(昭和22年法律第164号)により,全児童を対象とした健全育成・福祉政策の中に包含され,少年教護院は教護院と名称を改められて,児童福祉施設の一つに位置づけられることとなり,少年教護法は廃止された。