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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/2 

2 凶悪犯罪の動向

 凶悪犯罪は,終戦直後の10数年間の高い波が徐々に収まり,昭和60年代初頭に至るまで,多少の増減を繰り返しながら,全体としては減少傾向にあったが,平成2年を境に認知件数は増勢に転じた。さらには,来日外国人による凶悪犯罪の発生,銃器を使用した冷酷・残忍な強盗殺人事件の増加など,新たな様相を呈してきている。
(1) 殺人の動向
ア 全般的動向
 III-1図は,殺人について,昭和20年以降の認知件数,検挙件数及び検挙人員の推移を見たものである。

III-1図 殺人の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和20年〜平成7年)

 殺人の認知件数は,昭和29年の3,081件を頂点とする戦後の高原状態が続いた後,起伏を示しつつも,長期的には減少傾向を見せ,50年代前半以降は1,000件台で推移し,63年以降は1,000件台の前半を上下している。
 このように,殺人の認知件数については,終戦直後の時期を除き,ほぼ一貫して減少傾向を見せてきたが,平成4年以降漸増ないし横ばいの傾向が認められる。一方,最近10年間における殺人の検挙率の推移を見ると,おおむね96%から98%台にあり,大きな変化は認められない(巻末資料III-1参照)。
イ 少  年
 少年の殺人による検挙人員は,昭和21年以降40年代前半までは,26年と36年の各448人を最高として200人から400人台で推移し,40年代の後半からおおむね減少傾向を示し,50年代に入ると100人を割り,その後はおおむね70人ないし90人台で推移し,平成7年は80人で,検挙人員総数に対する比率は6.2%となっている(巻末資料III-2参照)。
ウ 外国人
 最近5年間における来日外国人(第1編第2章第6節参照)による殺人の検挙状況の推移を見ると,検挙件数・検挙人員共に平成5年の58件(72人)をピークに減少しており,7年には,36件(41人)となっている(巻末資料III-3参照)。その加害態様を見ると,同国籍の外国人に被害を加えたものが約4割を占めている。
(2) 強盗の動向
ア 全般的動向
 III-2図は,強盗について,昭和20年以降の認知件数,検挙件数及び検挙人員の推移を見たものである。
 強盗の認知件数は,昭和23年の1万854件をピークに,28年までに急激に減少し,その後,30年代半ばまでにその数は半減した。さらに,43年以降はほぼ2,000件台,60年からはほぼ1,000件台となったが,平成元年を底として2年以降増加傾向を示した。特に,6年にはこの25年来のピークとなる2,684件を記録するなど,この5年間で70%近く増加したが,7年には6年ぶりに前年を下回った。一方,最近10年間の強盗の検挙率を見ると,4年に60%台まで低下したのを除いて,ほぼ70%台から80%台を維持しており,7年には82.7%に達した(巻末資料III-1参照)。

III-2図 強盗の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和20年〜平成7年)

 次に,警察庁刑事局の資料によると,最近における,深夜スーパーマーケットを対象とした強盗事件,金融機関を対象とした強盗事件,パチンコ景品交換所を対象とした強盗事件の発生状況は,それぞれIII-1表III-2表III-3表のとおりであり,パチンコ景品交換所に対するものを除いて,発生件数は,いずれも平成7年には減少しているが,一方において,銃器の発砲を伴う凶悪な強盗事件がIII-4表のとおり,4年以降増加している。

III-1表 深夜スーパーマーケット強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率(昭和61年〜平成7年)

III-2表 金融機関強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率(昭和61年〜平成7年)

III-3表 パチンコ景品交換所強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率(平成元年〜7年)

III-4表 銃器発砲を伴う強盗事件の対象別認知件数(平成4年〜7年)

イ 少  年
 少年の強盗による検挙人員は,昭和23年の3,878人をピークとして30年代以降は起伏を示しながらも2,000人台で推移し,40年代に入ると減少し始め,46年には,1,000人を割って869人となり,その後も起伏を示しながら減少傾向にあったが,平成3年以降漸増の傾向にあり,7年には873人で,検挙人員総数の39.9%を示すに至った(巻末資料III-2参照)。
ウ 外国人
 最近5年間における来日外国人による強盗の検挙状況を見ると,殺人と同様,平成5年の124件(142人)をピークに減少ないし横ばいの傾向を示している(巻末資料III-3参照)。その加害態様を見ると,日本人を被害者とするものが8割を超えている点が殺人の場合と大きく異なる。