前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 8年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/5 

5 各種犯罪事件の処理状況

(1) 交通犯罪
 最近10年間における交通関係業過を除く刑法犯,交通関係業過及び道交違反の起訴率と起訴猶予率の推移を見ると,交通関係業過を除く刑法犯及び道交違反はほぼ一定しているものの,昭和62年以降,交通関係業過の起訴猶予率が上昇し,それとともに起訴率が下降している(前掲II-6図及びII-7図参照)。
 II-8図は,平成7年における終局処理区分別構成比を一般事件と交通事件に分けて見たものである。

II-8図 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比

 交通関係業過と道交違反の公判請求の比率は,いずれも一般事件と比べて極めて低く,道交違反の略式命令請求の比率は,84.2%と極めて高い。また,交通関係業過の不起訴(そのほとんどは起訴猶予)の比率が79.4%であるのに対し,道交違反のそれは5.7%と低い。
(2) 薬物犯罪
 覚せい剤取締法違反の起訴率は,平成4年以降の3年間は85%台で推移したが,7年には87.5%に上昇した(巻末資料II-3参照)。
 II-9図は,過去20年間における覚せい剤取締法違反の起訴率を男女別に見たものである。

II-9図 覚せい剤取締法違反の起訴率の推移

 覚せい剤取締法違反の起訴率は,男子では,昭和62年以降緩やかな下降傾向を示していたが,平成6年以降は上昇傾向にあり,7年には88.6%となっている。女子では,男子と比べ,全般にやや低い比率を示しているが,7年には82.5%に上昇している。
(3) 外国人犯罪
 外国人及びそのうちの来日外国人(検察統計年報における定義により,我が国にいる外国人のうち,永住者・特別永住者,在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者をいう。)に係る被疑事件の新規受理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。)の過去3年間の状況を示したものが,II-3表である。

II-3表 外国人・来日外国人被疑事件の罪名別検察庁新規受理人員

 平成7年における外国人被疑事件の新規受理人員は,前年より173人(1.0%)減少して,1万8,014人となっており,そのうち,来日外国人被疑事件の新規受理人員は1万2,530人で,検察庁新規受理人員総数の3.7%,外国人被疑事件新規受理人員の69.6%を占めている。罪名別では,刑法犯では,窃盗2,328人(1.8%。同罪の全新規受理人員における比率。以下同じ。),有価証券偽造364人(同32.3%),傷害(凶器準備集合,同結集及び暴行を含む。)273人(同1.0%)の順と,特別法犯では,入管法違反6,281人(同91.9%),覚せい剤取締法違反731人(同3.0%),売春防止法違反254人(同21.7%),大麻取締法違反215人(同11.9%)の順となっている。
 平成7年における外国人被疑事件の終局処理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。以下,本項において同じ。)は,前年より236人(1.3%)減少して,1万7,990人となっており,そのうち,来日外国人被疑事件の終局処理人員は1万2,451人で,検察庁終局処理人員総数の3.7%,外国人被疑事件終局処理人員の69.2%を占めている。
 II-4表は,平成7年における,来日外国人被疑事件の検察庁終局処理状況を,検察庁で処理された全事件(交通関係業過及び道交違反を除く。以下,本項において同じ。)との対比で示したものである。
 平成7年における来日外国人被疑事件の終局処理状況を見ると,来日外国人被疑事件の起訴率は67.6%,起訴猶予率は29.8%となっている。さらに,刑法犯(交通関係業過を除く。以下,本項において同じ。)及び特別法犯(道交違反を除く。以下,本項において同じ。)の別に起訴率及び起訴猶予率を見ると,刑法犯では起訴率65.7%,起訴猶予率31.1%,特別法犯では起訴率68.4%,起訴猶予率29.2%となっている。
 これに対し,来日外国人被疑事件を含む,検察庁で処理された全事件の起訴率は61.7%,起訴猶予率は32.8%で,刑法犯の起訴率が55.3%,起訴猶予率が37.9%,特別法犯の起訴率が70.6%,起訴猶予率が26.4%となっている。

II-4表 来日外国人被疑事件の検察庁終局処理状況及び起訴・起訴猶予率

(4) 暴力団犯罪
 検察統計年報に基づき,平成7年における,検察庁の被疑事件の処理中,暴力団関係者(集団的に,又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織の構成員及びこれに準ずる者をいう。以下同じ。)の既済人員を見ると,その総数(交通関係業過及び道交違反を除く。)は,1万1,655人で,うち起訴人員は6,940人(起訴率74.6%),起訴猶予人員は1,505人(起訴猶予率17.8%)となっている。
 一方,7年における検察庁全既済人員についての起訴率は61.7%,起訴猶予率は32.8%である。
 II-10図は暴力団関係者による犯罪の7年における主要罪名別起訴猶予率を全既済人員のそれと対比して見たものである(巻末資料II-4参照)。

II-10図 暴力団関係者の主要罪名別起訴猶予率