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 平成 6年版 犯罪白書 第4編/第10章/第6節/3 

3 外国人受刑者処遇の現状

 内務省行刑局の資料によれば,イングランドとウェールズ(以下「イギリス」という。)の行刑施設に収容された外国人被収容者は,1993年9月30日現在で2,334人であり,被収容者総数(国籍不明者を除く。)の6.8%を占めている。外国人被収容者の国籍別構成比を見ると,アイルランドが16.4%で最も高く,以下,ジャマイカ15.1%,パキスタン8.8%,ナイジェリア7.8%,インド7.7%などの順となっている。
 受刑者総数中の外国人受刑者の構成比の推移については,国籍別の統計がないので,これを1985年から1992年までのイギリスにおける行刑施設収容人員の人種別構成比によって見ると,IV-59表のとおりである。白人以外の者の比率は,1990年に18.2%と最高を示しているものの,16%台から18%台までの間で推移していてあまり変動がなく,1992年は17.2%となっている。1992年の統計によると,白人以外の者では,西インド諸島・ガイアナ・アフリカ系が60.9%を占め,以下,インド亜大陸系17.8%,中国・アラブ・混血13.8%,その他・記録なし7.6%となっている。

IV-59表 行刑施設収容人員の人種別構成比

 監獄法(Prison Act)及び監獄規則(Prison Rules)には,外国人の処遇について直接規定した条文はない。英語を解さない被収容者を処遇する場合には,140か国語以上の通訳サービスを刑務所職員は利用することができる。
 宗教については,本人の宗教行為を認め,食事についても,可能な限り本人の宗教上の要請や文化的な背景を考慮している。
 職員用及び受刑者用に「外国人受刑者情報源パック」(受刑者用は12か国語)というパンフレットを作成し,外国人受刑者についての様々な問題を提示し,その対応策,照会先等を明らかにしている。
 なお,人種問題が大きな社会問題となっており,その対策を推進している連合王国では,各施設に人種関係連絡官(RaceRelationsLiaisonOfficer)を置き,受刑者の人種的な問題や疑問の解決に当たるとともに,施設内の少数民族に属する受刑者の実状の把握に努めている。また,各施設に人種関係管理チーム(Race Relations Management Team)を編成し,人種問題に関する当局の方針が実行されているか,少数民族に属する受刑者が作業,教育等の分野で適切に処遇されているかなどをチェックしているほか,職員向けに「人種関係手引」を配布し,受刑者にもこれを閲覧させるなど,多様な人種問題対策が講じられている。