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 平成 6年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/3 

3 少年受刑者の処遇

 (1)少年受刑者の状況
 懲役又は禁錮の刑の言渡しを受けた者のうち,裁判時20歳未満である者を少年受刑者と呼ぶ。少年であることの特性を考慮し,少年刑務所又は刑務所内の特に区画した場所でその刑を執行するが,少年が20歳になった後も,26歳に達するまでは,引き続き同一場所において執行することができることとされている(少年法56条)。
 平成5年の少年新受刑者(新たに入所した少年受刑者)は50人(前年56人)で,そのうち入所時20歳未満の者は36人(同46人),裁判時20歳未満であるが入所時に20歳以上となっている者は14人である。また,5年12月31日現在の20歳未満の受刑者は20人(同28人)である。
 平成5年の少年新受刑者の刑期別構成比は,II-40図のようになっている。
 刑名別では,懲役が44人(前年51人),禁銅が6人(同5人)となっている。
 不定期刑受刑者は50人中48人(96.0%)である。
 罪名別に見ると,刑法犯が48人,特別法犯が2人であった。そのうち,最も多かったのは業過で19人,以下,強姦が10人,殺人及び傷害致死がそれぞれ5人となっている。

II-40図 少年新受刑者の刑期別構成比

 (2)少年受刑者の処遇の概要
 少年受刑者は,原則として少年刑務所に収容される。少年刑務所には,川越,水戸,松本,姫路,奈良,佐賀,盛岡及び函館の計8庁がある。
 少年刑務所においては,少年受刑者のほかに26歳未満の青年受刑者をも収容しており,少年受刑者数が少ないため,大多数は青年受刑者となっている。少年刑務所は,青少年受刑者の特性を考慮して,適正な処遇集団を編成し,職業訓練,教科教育及び生活指導に重点を置いて処遇に当たっており,その実施に際しては,地域社会の人々からも多くの協力を受けている。20歳未満である少年受刑者については,食事を少年食として特に配慮するほか,個室での処遇としたり,職業訓練への編入を考慮したり,クラブ活動参加を勧めたりするなどの配慮を行っている。
 職業訓練の種目は,溶接,自動車整備,電気工事,理容,ボイラー運転などがあり,多くの者が,公認の資格・免許を取得し,又は職業的技能を習得して,出所後の自立更生に役立てている。
 教科教育について見ると,松本少年刑務所では,昭和30年から所内に地元公立中学校の分校を設け,全国の義務教育未修了である受刑者のうち,本人の希望,刑期などを考慮し,適格な者を集めて入学させている。平成6年3月には,11人の修了者に対し,例年どおり,本校の中学校長から卒業証書が授与された。また,松本,奈良及び盛岡の各少年刑務所では,地元県立高校の協力を得て高校通信制課程を受講させており,6年3月には3庁で計12人が卒業証書を授与されている。このほか,希望者には,社会通信教育及び学校通信教育も受講させている。
 生活指導については,健全な精神を培い,自律心及び遵法精神をかん養し,必要な知識及び生活態度を身に付けることを目的として,青少年期の特性を十分に考慮しながら,入所時教育や出所時教育,進路指導,読書指導,集会,施設外教育,体育活動などを計画的に実施している。