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 平成 5年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節 

第2章 犯罪と犯罪者の国際化

第1節 犯罪者の国外逃亡と逃亡犯罪人の引渡し

 近年における交通機関,情報伝達手段等の飛躍的発達により,犯罪と犯罪者は国際化しており,これに応じて刑事司法手続における国際協力が進展している。
 警察庁刑事局の資料によれば,日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡している被疑者の数の最近10年間における推移は,I-30図のとおりであり,近年増加傾向を示していたが,平成4年は287人であり,前年に比べて24人(7.7%)減少している。この内訳は,刑法犯の被疑者173人,特別法犯の被疑者114人であり,このうち80人(総数の27.9%)は,覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反及び大麻取締法違反の被疑者である。国外逃亡者の国籍(地域を含む。以下,本章において同じ。)を見ると,日本が82人(総数の28.6%)で最も多く,また,日本を含めたアジアの国籍の者が合計259人で,総数の90.2%を占めている。

I-30図 国外逃亡者数の推移 (昭和58年〜平成4年)

 逃亡犯罪人の引渡しは,条約と関係国の国内法に従って行われる。そのため我が国は,アメリカとの間に「日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約」を締結しており,国内法として逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律68号)を定めている。
 同法においては,国内にいる逃亡犯罪人を外国に引き渡すには,
 [1] 当該外国からの引渡請求が外交機関を経由して(すなわち請求国から我が国に対して正式な手続で)なされなければならないこと
 [2] 東京高等検察庁検察官の請求に基づき,東京高等裁判所が審査の上,法令上問題がなく逃亡犯罪人を引き渡すことができる旨の決定をすることが必要であること
 [3] 法務大臣が,逃亡犯罪人を請求国に引き渡すことを相当と認めて,東京高等検察庁検事長に,その引渡しを命ずることを要すること
などが規定されている。
 法務省刑事局の資料によれば,平成4年中に,我が国からアメリカに対して,2件1名の逃亡犯罪人の引渡しの要請をしたが,身柄の引渡しを受けるに至っていない。また,同年中に,我が国に対しては,アメリカから2件3名,オーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)か,ら1件1名の逃亡犯罪人の引渡しの要請を受け,いずれも身柄の引渡しを完了している。