前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 4年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/2 

2 鑑  別

 III-10図は,少年鑑別所における観護措置によって収容された少年に対する標準的な鑑別の流れを示したものである。観護措置による収容の期間は,最長4週間と決められており,この期間に鑑別に必要な処遇と調査が行われる。
 少年鑑別所における処遇は,少年を明るく静かな環境に置き,少年が安んじて審判を受けられるようにするとともに,少年のありのままの姿をとらえて資質の鑑別に寄与するという重要な役割を有している。このため,少年の身柄を確保し,その心情の安定を図りながら行動観察を行い,鑑別に必要な情報を収集している。行動観察には,入所,居室内生活,運動,面会等の観察場面(収容中の通常の生活場面)において行動傾向等を観察する通常の行動観察と,課題作文,はり絵,絵画,集団討議その他意図的に一定の条件を設定した観察場面において行動傾向等を観察する意図的行動観察とがある。
 収容鑑別のための調査は,主として鑑別のための面接,身体状況の調査,心理検査,精神医学的検査及び診察,行動観察並びに外部の団体及び個人からの資料(外部資料)の収集によって行われる。

III-10図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の流れ

 こうした行動観察及び調査の結果から得られた情報を判定会議において総合し,,当該少年の資質の特質及びその問題点並びに少年を非行に走らせた要因及び再非行の危険性を明確にし,改善更生のための最適の処遇方針等を検討した上で,「鑑別結果通知書」が作成され,審判の資料として家庭裁判所へ提出される。また,鑑別の結果は,他の記録とともに「少年簿」に記録され,保護処分の決定がなされた場合,その処分の執行に資するため,少年院,保護観察所等へ送付される。
 少年鑑別所では,上記の収容鑑別のほかにも,在宅のまま家庭裁判所に事件が係属している少年に対する在宅鑑別,少年院,地方更生保護委員会,保護観察所,検察庁等からの依頼による依頼鑑別及び一般市民,公私の団体等からの依頼による一般少年鑑別を行っている。このように,少年鑑別所は,他の矯正施設と異なって,身柄の収容を伴わない対象者に対して鑑別を行うという機能も有しており,広く地域社会の非行防止に寄与している。
 平成3年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-28表のとおりであり,前年に比べて5,778人,10.6%増加している。鑑別受付人員の内訳では,一般少年鑑別が48.1%で最も多く,家庭裁判所関係の収容鑑別がこれに次いでいるが,交通(主たる非行が自動車又は原動機付自転車の運転に係るものをいう。)に限って見ると,保護関係機関からの依頼鑑別が50.2%で最も多くなっている。3年における一般少年鑑別は,前年に比べて17.0%の大幅な増加となっている。

III-28表 鑑別受付人員

 III-29表は,平成3年における家庭裁判所関係の収容鑑別のうち,鑑別判定を終了した少年について,鑑別判定と審判決定等との関係を見たものである。鑑別判定では,「少年院送致相当」と「在宅保護相当」と判定された者が圧倒的に多く,それぞれ48.0%,47.7%を占め,「教護院・養護施設送致相当」と「保護不適相当」(そのほとんどが検察官送致)と判定された者は,それぞれ2.2%,1.5%となっている。審判決定等との関係を見ると,「在宅保護相当」と判定された者の71.6%が保護観察に付されているが,14.4%は決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に付されている。また,「少年院送致相当」と判定された者の52.8%が少年院に送致されているが,21.3%が保護観察に,19.9%が前記の試験観察に,それぞれ付されている。すなわち,「少年院送致相当」と判定された者の4割強は,鑑別判定と異なって,在宅のまま処遇されている。

III-29表 鑑別判定と審判決定等との関係

 少年院送致の決定を受けた少年に対しては,まず,家庭裁判所が送致する少年院の種別(初等,中等,特別及び医療)を指定し,次に,少年鑑別所長が矯正管区長の定めた収容区分に従って具体的な送致少年院の指定を行う。
 もっとも,家庭裁判所が少年院送致の決定に当たって,短期処遇を行うことが適当である旨の処遇勧告を行った場合は,短期処遇を行う少年院に収容することとされている。また,長期処遇についても,家庭裁判所から少年院における処遇内容等について特別の処遇勧告が付された場合は,これをできる限り尊重し,送致少年院の指定が行われている(少年院における短期処遇及び長期処遇については,本章第4節1(1)及び(2)参照)。