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 平成 4年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節 

第2章 非行少年の処遇

第1節 概  説

 本章では,警察等の捜査機関(以下「警察等」という。)や一般人によって検挙,補導又は発見された非行少年が,その後,警察,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階で受ける処遇の実情を紹介する。
 III-9図は,非行少年に対する処遇の流れを示したものであり,その概要は,次のとおりである。
 警察等は,犯罪少年(交通反則金納付事件に係るものを除く。)を検挙した場合,罰金以下の刑に当たる犯罪については,事件を直接家庭裁判所に送致し,それ以外の犯罪については,検察官に送致する。
 犯罪少年の事件の送致を受けた検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の嫌疑があると思料するとき,又は犯罪の嫌疑がない場合でも虞犯等家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,処遇意見を付けて事件を家庭裁判所に送致する。
 触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,これを知った者が都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされており,児童福祉法上の措置が優先する。家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付すことができる。
 14歳以上の虞犯少年については,原則として,これを発見した者が家庭裁判所に通告しなければならないとされている。この虞犯少年が18歳未満であるときは,警察官又は保護者は直接児童相談所に通告することができる。
 家庭裁判所は,まず少年に関する調査を実施するが,家庭裁判所調査官に,少年の生い立ち,生活環境等に関する社会調査を行わせるほか,調査及び審判に資するため必要があるときは,少年を少年鑑別所に送致して資質鑑別を求めることができる。

III-9図 非行少年処遇の流れ

 家庭裁判所は,これら調査の結果,審判に付すことができず,又は審判に付すことが相当でないと認めるときは,審判不開始決定をして事件を終局させ,また,審判を開始するのが相当と認めるときは,審判開始の決定をする。審判の結果,保護処分に付すことができず,又は保護処分に付す必要がないと認めるときは,不処分の決定をする。
 家庭裁判所は,調査又は審判の結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,事件を児童相談所長に送致し,16歳以上の少年に対して,刑事処分を相当と認めるときは,事件を検察官に送致する。後者は逆送とも呼ばれ,送致を受けた検察官は,原則として起訴することとなっている。起訴された少年に対するその後の処遇の流れは成人の場合と同様であるが,犯行時18歳未満の者に対する死刑及び無期刑の緩和,懲役及び禁錮に関する不定期刑(刑の長期と短期を定める。)の採用,成人と区別された少年刑務所等で処遇することなどが定められている。
 家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付すことを相当と認める場合には,保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致のいずれかの決定を行う。保護観察に付された少年は,保護観察所の保護観察官及び民間の篤志家である保護司の指導監督を受け,改善更生が図られる。教護院・養護施設送致となった少年は,児童福祉法による施設である教護院(不良行為をなし,又はなすおそれのある児童を教護することを目的とする施設)又は養護施設(保護者のない児童,虐待されている児童等の養育保護を行う施設)に収容される。少年院送致となった少年は,初等,中等,特別,医療のいずれかの少年院にそれぞれ収容され,矯正教育を受けつつ更生への道を歩み,仮退院が許可され出院した後は,保護観察に付される。
 このほか保護観察に付される少年としては,刑の執行を猶予されて保護観察に付された少年及び実刑となり少年刑務所等の行刑施設で刑の執行を受け仮出獄した少年がある。