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 平成 4年版 犯罪白書 第2編/第4章/第6節 

第6節 恩  赦

 恩赦には,[1]大赦(有罪の言渡しを受けた者については,その効力を失わせ,まだ有罪の言渡しを受けない者については,公訴権を消滅させる。),[2]特赦(有罪の言渡しを受けた特定の者に対し,その効力を失わせる。),[3]減刑(刑の言渡しを受けた者に対し,刑を軽減し又は刑の執行を軽減するほか,刑の執行猶予中の者については,刑の軽減と併せて猶予の期間をも短縮させることができる。),[4]刑の執行の免除(刑の言渡しを受けた特定の者に対し,刑の執行を免除する。),[5]復権(有罪の言渡しを受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し,又は停止されている者に対して,その資格を回復させる。),の5種類がある。
 恩赦は,これを行う方法で分けると,政令で罪や刑の種類,基準日等を定めて,これに該当する者に対して一律に行われる政令恩赦(大赦,減刑及び復権)と,特定の者に対して個別的に審査した上で行われる個別恩赦(特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権)とがある。
 個別恩赦は,さらに,常時恩赦と特別基準恩赦とに分けられる。前者は常時行われ,後者は政令恩赦が行われる際などに,同恩赦の要件から漏れた者などを対象として,内閣の定める基準により,一定の期間を限って行われる。個別恩赦が行われるには,まず検察官,行刑施設の長又は保護観察所長が,職権により又は本人の出願に基づいて中央更生保護審査会に恩赦の上申をする。これを受けた同審査会が審査を行い,恩赦を相当と判断した場合には,法務大臣に恩赦の申出を行い,法務大臣が閣議を請議し,これを受けた内閣が恩赦を決定し,次いで天皇の認証を受け,恩赦が効力を生ずる。
 常時恩赦について,平成3年中に中央更生保護審査会が新たに受理した人員は77人で,繰越人員と合わせると146人となるが,恩赦の閣議決定が行われた人員は30人である。また,同審査会が恩赦不相当とした人員は23人である。II-65表は,常時恩赦の種類・上申者別恩赦人員を示したものである。復権が28人(93.3%),刑の執行の免除が2人(6.7%)となっている。

II-65表 常時恩赦の種類・上申者別恩赦人員

 復権は,既に更生したと認められる者で,前科のあることにより資格が制限されるなど社会的活動の障害となっている場合に,法令の定めるところにより喪失し又は停止されている資格を回復させようとするものである。また,刑の執行の免除は,主として,無期刑の仮出獄者について保護観察を終了させる措置として採られるものである。この復権及び刑の執行の免除は,いずれも,これらの者の社会復帰を一層促進する刑事政策的役割を果たしている。