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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第4節/3 

3 鑑別状況

 平成元年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-75表のとおり5万4,845人であり,前年に比べて5,010人(10.1%)増加している。鑑別受付人員の内訳では,一般少年鑑別が総数の44.5%で最も多く,次いで,収容鑑別が35.8%となっており,昭和55年以降10年ぶりに一般少年鑑別と収容鑑別の受付人員順位が入れ替わった。また,交通事犯(主たる非行が自動車又は原動機付自転車の運転に係るものをいう。)に限ってみると,保護関係機関からの依頼が51.8%を占めている。なお,平成元年における在宅鑑別は2,142人であり,前年に比べて425人(24.8%)増加した。
 III-76表は,平成元年おける家庭裁判所関係の鑑別判定終了少年1万7,009人について,その鑑別判定と審判決定との関係を見たものである。鑑別判定を見ると,「少年院送致相当」と判定された者と「在宅保護相当」と判定された者が,それぞれ49.2%,46.0%といずれも半数近くを占め,「検察官送致相当」と「教護院・養護施設送致相当」と判定された者が,それぞれ1.5%,2.5%となっている。判定と決定との関係を見ると,「少年院送致相当」と判定された者の53.9%は少年院に送致されているが,19.8%は保護観察に付され,19.0%は決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に付されている。また,「在宅保護相当」と判定された者の69.5%が保護観察に付されているが,15.6%は試験観察に付されている。このことから,「在宅保護相当」と判定された者の多くは在宅のまま処遇されることが多いが,「少年院送致相当」と判定された者の半数近くは,判定と異なって,在宅のまま処遇されていることがわかる。

III-75表 鑑別受付人員(昭和62年〜平成元年)

 III-50図は,平成元年において,上記少年に対して,少年鑑別所が付した判定及び家庭裁判所が決定した処分等を主要非行名別に構成比で示したものである。これによると,少年鑑別所の判定で収容保護(少年院及び教護院・養護施設送致)の比率が高い非行名は,強姦(74.4%),覚せい剤取締法違反(63.8%),強制猥褻(60.3%),強盗(59.0%)などであり,また,保護観察など在宅保護の判定比率が高いのは,暴力行為等処罰法違反(58.5%),傷害(49.8%),毒物及び劇物取締法違反(48.8%)などである。一方,家庭裁判所の決定で収容保護の比率が高いものは,強姦(59.1%),強盗(47.6%),覚せい剤取締法違反(39.4%),殺人(36.7%)など,また,保護観察の決定比率が高いものは,暴力行為等処罰法違反(54.2%),傷害(46.7%)など,さらに,いわゆる中間処分である試験観察が選択されるのは虞犯(31.1%),毒物及び劇物取締法違反(22.7%)などである。なお,殺人については,少年鑑別所の判定,家庭裁判所の決定共に検察官送致の比率が高くなっている。

III-76表 鑑別判定と審判決定等との関係(平成元年)

III-50図 収容鑑別対象少年の主要非行名別,鑑別判定及び審判決定等の各構成比(平成元年)

 家庭裁判所は,少年院送致決定を行うに当たって,送致する少年院の種類(初等,中等,特別及び医療)を指定し,少年鑑別所長が,矯正管区長の定めた収容区分に従って具体的な送致少年院の指定を行う。また,短期処遇少年院への指定は,家庭裁判所の処遇勧告によることになっている(本章第5節1参照)。
 少年鑑別所は,一般少年鑑別として,地域の一般青少年の健全育成を目的として活発な相談・指導・治療活動を行っており,その内容は,単に非行問題に限らず,広く青少年の適応,適性等諸問題にわたっている。一般少年鑑別を実施するために,規模の大きな施設においては,少年鑑別所に隣接して独立した外来相談棟を設けており,その他の少年鑑別所においても施設の一部が専用にこれに当てられている。また,地域の関係機関,学校等の要請を受け,あるいは,これらと協力して外部に専門職員を派遣して相談活動を行うこともある。最近では,いわゆる電話相談件数も増加の傾向にある。
 III-51図は,法務省矯正局の資料により,最近5年間における全国の一般少年鑑別受付人員の推移を相談内容別に示したものである。受付人員は,昭和60年に1万3,164人であったが,その後逐年増加して,平成元年には2万4,400人となっている。相談内容では,受付人員の多い順に,性格関係1万1,048人(45.3%),学校関係5,813人(23.8%),適性関係5,600人(23.0%)などとなっており,実施形態で見ると,個別実施が4,368人(17.9%),集団実施が2万32人(82.1%)である。このうち,非行,家庭相談では個別相談の比率が高くなっている。

III-51図 一般少年鑑別の相談内容別受付人員の推移(昭和60年〜平成元年)