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 平成 元年版 犯罪白書 第4編/第5章/第1節 

第5章 むすび

第1節 昭和の時代の特徴

 昭和の60余年は,我が国の歴史上かつてない波乱と激動の時代であった。昭和の時代の幕が開き,間もなく議会政治が衰退して全体主義への道を歩み,満州事変,日中戦争,太平洋戦争に突入した。やがて敗戦を迎えて,平和と民主主義の国家へと再生した我が国は,国民の不断の努力により今や経済大国に成長し,国際社会においても光輝ある地位を築くに至った。経済的にみると,昭和の初期には,農業・漁業や中小企業による生糸,綿織物等を中心とする産業から,重化学工業化に移り軍需産業の発展を経て,戦禍による経済の壊滅を迎え,戦後の灰じんの中から産業を復興させ,鉄鋼,船舶,電力などの重化学工業の振興,自動車,電化製品,石油化学等の産業の発展を経て,近年ではコンピュータ,エレクトロニクス,情報等を先端とする産業の高度化が進展しているのである。国民一人当たりの国民総生産も,昭和の初期には約120ドルでアメリカの15%程度にすぎなかったが,62年には1万9,664ドルとなってアメリカの1万8,570ドルを超えるに至り,国民総生産自体はアメリカに次いで自由世界第2位となっている。国民の平均寿命も,昭和初めには45歳前後にすぎなかったが,22年には男女ともに50歳を超え,63年には男子75.5歳,女子81,3歳までに上昇し,世界一の長寿国となっている。このように,昭和の時代は,正に戦争と平和,全体主義と民主主義,貧困と繁栄など,両極端に激しく揺れ動いた時代であったといえるが,このような時代に,犯罪情勢や犯罪者の処遇等は,どのように変化しているのであろうか。