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 昭和37年版 犯罪白書 第三編/第三章/一 

第三章 少年刑務所における処遇

一 少年受刑者

 懲役または禁錮の言渡を受けた少年(一六歳以上二〇歳未満)に対しては,とくにもうけた刑務所,または刑務所内のとくに分界した場所で,その刑を執行することが,少年法によって定められている。これは,少年は成人受刑者と分離して収容すること,および少年受刑者には特別な処遇と教育が必要であるという趣旨によるものである。なお,本人が二〇歳に達した後でも,その心身の状況などによって少年処遇を適当と認められた場合は,満二六歳に達するまで少年受刑者として取り扱うことも許されている。
 このような少年受刑者数は,昭和三五年末現在二,一一七人(うち女子は七人)で,これは全受刑者数六一,一〇〇人の約三・五%にあたっている。少年受刑者の数は,III-27表にみられるように,昭和二三年に戦後最高の六,三五三人に達し,全受刑者数の約六・三%であったが,その後次第に減少してきた。このような少年受刑者数の推移は,少年院の収容状況と密接に関連している。すなわち,昭和二四年に新少年法および少年院法によって少年院が整備されて,犯罪少年のうち一八歳未満のものの多くが,家庭裁判所の保護処分決定によって少年院に送致されるようになった。昭和二四,五年の少年院受刑者数の減少と少年院収容者数の増加は,この間の状況を反映しているものと言えよう。さらに昭和二六年の少年法の改正によって,「少年」の年齢が一八歳未満から二〇歳未満に引き上げられると,少年院に収容されるものの数はさらに急激に膨張し,これに反して少年受刑者の数は減少している。このような情勢は,比較的近年まで続いてきたが,凶悪な少年犯罪の増加や,少年院収容などの前歴をもつ少年の再犯などが注目されるようになった最近では,これらの傾向を反映したためか,昭和三三年以降少年受刑者の数はやや増加の気配をみせている。

III-27表 少年受刑者・少年院収容者の年末現在人員(昭和20〜35年)

 次に,少年受刑者の罪名別人員をみると,III-28表(二〇歳未満で刑務所に入所した者の昭和三一年以降各年度の罪名別人員と率)のとおりである。これによると,窃盗が高率である点は毎年同じであるが,詐欺,横領および強盗は,ともにやや減少の傾向にあり,殺人,強姦などがかなりの増加をみせている。また,暴力行為等処罰法違反,麻薬取締法違反が,最近わずかではあるがみられるようになったのは,注目を要する。なお,これらの罪名別人員の比率を,成人を含めた新受刑者総人員のそれと比較すると,二〇歳未満の新受刑者は財産犯(窃盗,詐欺,横領など)では著しく低率であるが,殺人,強姦,強盗,恐喝などの暴力犯または性的犯罪の比率は,かなり高率である。

III-28表 20歳未満新受刑者の罪名別人員と率等(昭和31〜35年)