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 昭和37年版 犯罪白書 第二編/第二章 

第二章 婦人補導院における処遇

 婦人補導院は,昭和三三年五月売春防止法の改正に伴ってできた国の施設である。その目的は,売春防止法第五条の勧誘等の罪を犯した成人女子に対し,裁判所が補導処分の言渡をしたときに,これを収容し,矯正するにある。したがって,補導処分は,刑罰ではなく,一種の保安処分であるといわれている。
 婦人補導院は,東京,大阪,福岡の三カ所にもうけられ,収容定員は,東京九九,大阪九五,福岡八三,合計二七六人である。
 昭和三六年の新入院者数は,三九六人で昭和三五年の四〇八人に比して,一二人の減少である。昭和三六年の新入院者を調査したところによると,II-24表に示すように,再入以上のものが三三・六%(昭和三五年は二六%)あり,その年齢は二五歳以上二九歳までのものが二五・八%で最も多く,精神状況は正常のものが一二・六%を占めるにすぎず,準正常三六・二%,精神薄弱が四二・九%を占め,その知能指数は,IQ七九以下のものが六七・七%を占めている。しかも,性病にかかっているものは三七・四%,その他の疾患にかかっているものが二八・五%で,疾患にかかっていないものは,わずかに三一・三%にすぎない。このような収容者に対しては,特別の処遇を必要とするとともに,その矯正には困難を伴う場合が少なくない。

II-24表 婦人補導院入院者に関する調査結果(昭和36年)

 婦人補導院では収容者を分類調査し,心身がおおむね正常な者,性格異常者,精神薄弱者,疾病により療養を要する者の四グループにわけ,さらに六月間の在院期間を前期,後期に分けて,それぞれ必要な処遇を行なっているが,六カ月の期間が短かすぎるため,十分な処遇を行なうことができない実情にある。
 職業補導の種目としては,家事,園芸,洋裁,和裁,手芸,謄写印刷,タイプライターなどを行なっており,院外補導の種目としては,家事手伝,調理見習,ラジオ部品組立,プレス工,ミシン工などが行なわれている。
 婦人補導院では刑務所と異なり,自己労作がさかんに行なわれており,昭和三六年一二月末現在一一五人がこれに従事している。
 昭和三六年に出院した者三九八人のうち,疾患の治療の終わっていない者が二二%,帰住先として婦人保護施設を選ばれた者が一四%,更生保護会を選ばれた者が三%,病院に送られた者が一%となっているが,このような状況にあるということは,とりもなおさず,婦人補導院の処遇の困難さを示しているといえよう。