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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第三章/三/2 

2 交通犯罪の発生と検挙

 警察統計により昭和三五年における警察取締の対象となった道交違反は,I-47表に示すように,検挙(違反報告をしたもの)が四,三二六,〇八七件,警告その他(違反報告をしないもの)が一二,八八六,〇七四件であり,また,同年の事件処理件数は,検察庁または家庭裁判所に送致したものが二,九五七,八三四件,訓戒にとどめたものが一,一一八,二六八件である。もっとも,道交違反は,取締の方針,取締の徹底の度合で検挙件数が増減するから,右の統計が道交違反の発生状況を示すものではない。統計上の暗数の多いこの種の犯罪についてその発生件数を知ることは不可能に近いといえるであろう。

I-47表 道路交通取締法令違反の警察取締件数等(昭和35年)

 警察統計によると,この取締件数のうち少年の占める比率は,検挙件数では二一・二%,事件送致では二〇・三%,訓戒では二一・七%である。したがって,少年による道交違反は,総件数のほぼ二割にあたることになる。
 次に,検察統計によって,昭和二四年以降の道交違反の受理状況をみると,I-48表のとおり,昭和三五年においては,二,五七一,九六三人であって,昭和二四年のそれと比較すると約一二・八倍の増加をみたことになり,また,昭和三四年と比較すると三二%の増加をみたこえになる。検察庁における全刑事事件(刑法犯,特別法犯)の受理人員のうち,道交違反のそれが占める比率をみると,昭和三五年には七五・四%を占めているのである。道交違反を除く刑事事件の受理人員は,昭和三一年以降八〇万台を前後し,ほぼ安定した水準を示しているから,検察庁の受理人員の増加は,主としてこの道交違反の増加にあるといえるのである。

I-48表 道路交通取締法令違反の検察庁受理人員等(昭和24〜35年)

 次に,道交違反を犯した少年の受理状況についてみると,検察庁に送致されるのは,道交違反のうち罰金以下の刑のみにあたる罪種は除かれており(罰金以下の刑のみにあたる罪種は,警察から家庭裁判所に直接送致される),また,警察から検察庁に送致を受けた少年事件は,すべて家庭裁判所に送致しなければならないことになっているから,家庭裁判所の統計によるのが適当である。I-49表は,昭和三〇年以降の家庭裁判所の受理件数を示したものであるが,昭和三五年には五八万七千余件であって,昭和三〇年の一九万八千余件の約三倍にあたることになる。さきに掲げた検察統計(I-48表)によると,統計の基礎は家庭裁判所の統計の場合とやや異なるが,昭和三五年の道交違反は昭和三〇年の約一・六倍強にすぎないから,少年のそれがいかに大きいかわかる。

I-49表 家庭裁判所の道路交通取締法令違反保護事件の新受件数等(昭和30〜35年)

 交通犯罪のうち,過失によって死傷の結果を招いたものの検察庁における受理状況をみよう。I-50表は,昭和二四年以降の業務上過失致死傷(このほかに重過失致死傷があるが,その数は少ないし,また交通犯罪以外の犯罪によるものが含まれているので一応除外した)の検察庁における受理人員を示したものであるが,昭和三五年は一二五,九九二人であって,昭和二四年の約一五倍に達している。刑法犯の受理人員は,昭和二四年以降多少の高低はあっても,ほぼ六〇万人台で大した増加をみせていないが,業務上過失致死傷は増加の一途をたどっている関係で,それが刑法犯受理人員中に占める割合は,昭和二四年の一・三%から昭和三五年の二〇・一%へと飛躍的に増大しているのである。

I-50表 業務上過失致死傷の受理人員等(昭和24〜35年)

 なお,昭和三五年に交通事故を起こし警察で取締の対象となった自動車運転者(無免許運転を含む)三五二,五四八人につき,その年齢別をみた警察統計によると,一六-一九歳が総数の一四・四%にあたる五〇,九〇九人,二〇-二四歳が三二・四%の一一四,二一二人,二五-二九歳が二三・八%の八四,〇二〇人,三〇-三四歳が一二・七%の四四,八四四人,三五歳以上が一六・六%の五八,五六三人である。これによると,少年は,三〇-三四歳の運転者より交通事故を多く起こしていることになる。