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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第6章/第2節/1 

第2節 最近の累犯者の実態

1 各種の累犯者の状況

 最近における各種の累犯者の状況について,10年前の53年版白書で指摘された主な累犯者の類型別に分析すると,次のような特徴が認められる。
 まず第一に,危険な常習的犯罪者については,指定犯罪(殺人,強盗・同致死傷,強盗強姦・同致死,放火,強姦・同致死傷,強制猥褒・同致死傷,傷害・同致死)による刑務所入所歴のある者の一部には,同種の犯罪を犯す傾向が強い者のあることが明らかにされている。ただ,最近の新受刑者中の前刑が指定犯罪である再入者及び前刑,本刑共に指定犯罪である再入者については,いずれも実人員,比率共に減少しており,後者については,中高年齢化は進んでいるが,若年層の者が著しく減少しているのであって,これらの累犯者の状況は,10年前と比べて一応好転していると言えよう。次に,指定犯罪のうち同一の罪を繰り返す者は,10年前とほぼ同様の人数であり,最近の年間平均(昭和57年から61年までの平均)では,殺人で20人,放火で17人,強姦・同致死傷で35人と,毎年ほぼ一定数いることが確認された。10年前の平均(47年がら51年までの平均)では,殺人で16人,放火で11人,強姦.同致死傷で60人であるがら,最近の年間平均では,10年前と比べて,殺人,放火では増加し,強姦等では減少している。第二に,最近でも,殺人,放火等の凶悪な犯罪を犯した者のうちで,精神障害者の比率は比較的高く,精神障害犯罪者の中では,同種の犯罪を繰り返す者も相当数おり,10年前と比べて特段の変化が認められない状況である。第三に,窃盗,詐欺の累犯者は,10年前と比べて,社会が一層豊かになっているのに,経済状況,家庭環境等の悪い者や中高年層の者が増加しているなど,社会の繁栄と逆比例して憂慮すべき状態にある。第四に,暴力団関係者の累犯者については,10年前と比べて,新受刑者総数中の暴力団関係の累犯者の人員と比率が相当増加していることが注目される(第2章第2節参照)。