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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第3章/第5節/3 

3 40犯以上の前科者

 先に指摘したように,前科が多数回になるに従って,財産刑の前科の占める比率が高くなり,40犯以上の者合計61人のうち,財産刑が半数以上の者は59人もいるので,ここでは,40犯以上の者についてまとめて考察することとする。この61人のうち,そのすべてが財産刑の者は25人,7割以上が財産刑の者は55人であり,これらの者は財産刑の前科を重ねて多数回前科者となったものと言える。なお,89犯の最多犯歴保有者は,海運業者であり,船舶安全法違反で80回,その他船員法違反,船舶職員法違反等で9回の罰金刑に処せられたものである。
 まず,40犯以上の61人について調査時の年齢を見ると,40歳未満が12人,40歳代が15人,50歳代が17人,60歳代が14人,70歳以上が3人となっており,比較的若い年齢層の者も少なからず含まれている。次に,この者たちが犯した犯罪の罪名を多い順に並べると,[1]船舶安全法違反,[2]軽犯罪法違反,[3]船舶職員法違反,[4]毒物及び劇物取締法違反,[5]鉄道営業法違反,[6]船員法違反,[7]漁業調整規則違反,[8]風俗営業等取締法違反,[9]傷害,売春防止法違反などとなっている。そして,これらの者は,その犯した罪種別に分類することができ,その内訳を見ると,[1]主として船舶安全法違反,船舶職員法違反,船員法違反,漁業調整規則違反等の海運,水産関係の犯罪を反復している者(27人),[2]主として毒物及び劇物取締法違反を反復している者(5人),[3]条例違反を重ね,売春防止法制定後は同法違反を反復した者(4人),[4]主として鉄道営業法違反を反復して科料に処せられている者(4人),[5]主として軽犯罪法違反を繰り返して科料に処せられている者(14人),[6]極めて多種の犯罪を反復した者(5人),[7]その他として,風俗営業等取締法違反を反復した者(1人),主として物価統制令と迷惑防止条例違反を反復した者(1人)に分けることができる。このように,40犯以上の者は,繰り返し同種の犯罪を犯す者が多い。その犯した罪名の中には,法定刑が財産刑だけであるものもあるが,自由刑も規定されていながら,繰り返し財産刑に処せられた者も少なくなく,その科刑について検討を要する問題もないわけではないように思われる。
 なお,40犯以上の者の最終犯の主要罪名とこれに対する刑名を見ると,船舶安全法違反(8人),船舶職員法違反(8人),船員法違反(4人)及び港則法違反(3人)については,いずれも罰金が科されており,売春防止法違反(7人),毒物及び劇物取締法違反(5人)及び覚せい剤取締法違反(2人)では,懲役が科されている。軽犯罪法違反(9人)と鉄道営業法違反(4人)では,拘留(2人)又は科料(11人)に,その他の罪名では,懲役(3人),罰金(7人),拘留(1人)にそれぞれ処せられている。