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 昭和61年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節/2 

2 ゲリラ事犯

 最近5年間におけるゲリラ事犯の認知件数の推移は,I-38表のとおりである。昭和60年においては,前年の48件を大幅に上回る87件が発生したが,うち65件が中核派によるものである。主要なゲリラ事件を挙げると,次のとおりである。
 (1) 成田闘争関係
 ○ 警察庁科学警察研究所に対する火炎車ゲリラ事件(1月11日,東京)
 ○ 新東京国際空港及び羽田空港に対する金属弾発射ゲリラ事件(4月12日,千葉,東京)
 (2) 国鉄分割民営化反対闘争関係
 ○ 国鉄中央線信号ケーブル焼燬事件(3月13日,東京)
 ○ 国鉄同時多発ゲリラ事件(11月29日,東京ほか)
 (3) 他の闘争に関するもの
 ○ 大阪神戸駐在米国総領事館に対するパイプ弾発射事件(1月1日,神戸)
 ○ 大阪府警第2機動隊舎に対するパイプ弾発射事件(2月17日,大阪)
 これらのうち,4月12日の新東京国際空港及び羽田空港に対する金属弾発射事件は,中核派が時限発射装置を用いて金属弾を約1kmも飛ばし,空港を混乱させたという事案であり,11月29日の国鉄同時多発ゲリラ事件は,全国8都府県の合計33か所で,国鉄の通信信号ケーブルを切断したり,変電施設に放火するなどしたほか,中核派の活動家多数が国鉄浅草橋駅を襲撃して駅舎などを焼倣するなどしたもので,いずれも重大な社会的反響を呼んだ事件である。このように60年のゲリラ事犯は,全国規模で敢行されたり爆発物が使用されるなど,これまでのゲリラとは質の面でも大きく変化したものとなっているが,この傾向は今後とも継続する可能性があり,過激派の動向には一層の警戒が必要である。

I-38表 ゲリラ事犯認知件数