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 昭和60年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3 

3 鑑  別

 III-9図は,観護措置による収容少年に対する標準的な鑑別の手続を示したものである。鑑別のための調査は,面接,心理検査,精神及び身体医学的検査,行動観察,生活史・環境資料によるほか,上記の探索処遇等の方法によって行われる。これらの調査結果をもとに,少年の資質と非行性との関連,問題点の所在及び特徴,処遇上の“指針等について記載した「鑑別結果通知書」が作成され,審判の資料として,また,保護処分決定後の処遇方針の策定にも役立てるために家庭裁判所へ送付される。また一方,鑑別の結果は:「少年簿」に記載され,保護処分の決定がなされた場合,少年院,保護観察所等へ送付される。

III-9図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の手続

 少年鑑別所では,収容少年以外に,在宅のまま家庭裁判所に事件が係属している少年,並びに,少年院,地方更生保護委員会,保護観察所,検察庁のほか,一般家庭や学校から依頼を受けた少年に対しても鑑別を行っている。このように少年鑑別所は,他の矯正施設と異なって,身柄の収容を伴わない対象者に対する鑑別という機能をも有しており,広く非行防止対策に寄与している。なお,法務省においては,精密な鑑別又は調査を必要とする問題性の有無を確認する方法として,知的側面,性格,非行等に関する簡易検査に基づき,その集計,各検査の簡易所見の記載を電子計算機によって処理する方式(CAC方式Computer-AidedClassification)を開発し,現在,一部で実施に移している。
 昭和59年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-29表のとおり4万5,034人であり,前年に比べて65人,0.1%増加している。鑑別受付人員の内訳では,収容鑑別が総数の54.6%で最も多いが,交通事犯(主たる非行が自動車又は原動機付自転車の運転にかかるものをいう。)に限ってみると,保護関係機関からの依頼が57.3%を占めている。
 なお,近年,在宅鑑別は減少しているものの,収容鑑別の増加が著しい。
 III-30表は,昭和59年における家庭裁判所関係鑑別判定終了少年2万1,074人について,その鑑別判定と審判決定との関係を見たものである。

III-29表 鑑別受付人員(昭和57年〜59年)

III-30表 鑑別判定と審判決定との関係(昭和59年)

 鑑別判定を見ると,「少年院送致相当」と判定された者と,「在宅保護相当」と判定された者が48.9%,46.3%とそれぞれ半数近くを占め,「検察官送致相当」と「教護院・養護施設送致相当」と判定された者がそれぞれ2.3%,1.9%となっている。
 判定と決定との関係を見ると,「在宅保護相当」と判定された者の66.3%は保護観察に付されているが,16.0%は決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に付されている。また,「少年院送致相当」と判定された者の54.2%は少年院に送致されているが,20.5%は保護観察に付され,18.1%は試験観察に付されている。これらのことから,「在宅保護相当」と判定された者の多くは在宅のまま処遇されることが多いが,「少年院送致相当」と判定された者の半数近くは,判定と異なって,在宅のまま処遇されていることが分かる。
 少年院送致の決定をした少年に対しては,まず,家庭裁判所が,送致する少年院の種別(初等・中等・特別・医療)を指定し,これを受けた少年鑑別所長が矯正管区長の定めた収容区分に従って具体的な送致少年院の指定を行う。しかし,家庭裁判所が少年院送致の決定に当たって,短期処遇を行うことが適当である旨の処遇勧告を行った場合には,短期処遇を行う少年院に収容することとされている。