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 昭和59年版 犯罪白書 第4編/第2章/第2節/1 

第2節 少年事件の検察・裁判

1 少年検察

 IV-15表は,昭和40年以降における業過及び道交違反を除く少年被疑事件の検察庁新規受理人員の罪種別,年齢層別構成比を示したものである。5F3年の新規受理人員は,総数では22万3,006人で,前年に比べ2万4,043人(12.1%)増加している。このうち刑法犯では,5,273人(2.8%)増加して19万3,875人,特別法犯では1万8,770人(181.2%)増加して2万9,131人となっており,特別法犯の増加が著しいことが分かる。この急増は,57年の毒物及び劇物取締法の一部改正による懲役刑の新設によるところが大きい。58年における罪種別内訳を見ると,刑法犯では,財産犯が16万1,209人で総数の72.3%を占めており,次いで粗暴犯(脅迫を除く。)が2万753人で9.3%となっている。58年の年齢層別構成比を見ると,総数では,年少少年が46.0%で首位を占め,以下,中間少年の33.9%,年長少年の20.1%の順となっている。年少少年は,54年から引き続き第1位を占めるようになったが,58年では前年より1万2,080人(13.3%)増加して10万2,593人となり,非行の低年齢化が進んでいることが如実に現れている。罪種別に見ると,粗暴犯及び財産犯では年少少年が首位を占めており,凶悪犯及び特別法犯では年長少年が最も高い比率を示しているが,58年には,上記の法改正を反映して,特別法犯においても,年少少年の比率がかなり高くなっている。
 成人を含めた検察庁の業過及び道交違反を除く新規受理人員中に占める少年被疑事件の比率を見ると,総数では,昭和52年の24.2%から逐年上昇を続け,58年では39.4%となっている。罪種別に見ると,凶悪犯では16.7%(前年は14.5%),粗暴犯(脅迫を除く。)では35.4%(同33.9%),財産犯では60.5%(同57.4%),特別法犯では16.2%(同7.7%)といずれも前年より上昇している。

IV-15表 検察庁新規受理犯罪少年の罪種・年齢層別構成比(昭和40年,50年,56年〜58年)

IV-16表 罪種・年齢層別検察官処遇意見及び家庭裁判所終局処理結果の構成比(昭和58年)

 検察官は,少年被疑事件を家庭裁判所へ送致するに際し,少年の処遇に関して意見を付することかできるが,昭和58年における,業過,過失致死傷及び道路交通法違反を除く家庭裁判所終局処理人員について,検察官の処遇意見と家庭裁判所の処理結果とを罪種別,年齢層別に対比して見ると,IV-16表のとおりである。検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と家庭裁判所の各終局処理結果の比率を比べると,ほとんどすべての罪種及び年齢層において,家庭裁判所の終局処理結果は検察官の付した意見の比率を下回っている。

IV-17表 逆送少年の罪名別検察庁処理人員(昭和58年)

 IV-17表は,家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,昭和58年における検察庁処理状況を罪名別に示したものである。起訴人員総数は,前年より5,866人増加して4万4,765人である。そのうち,98.4%に当たる4万4,071人は業過又は道交違反である。起訴のうち,4万3,628人(97.5%)は略式手続によって処理されており,公判請求された少年は1,137人(前年は1,110人)にとどまっている。公判請求率は2.5%で,前年の2.9%からやや低下している。公判請求人員のうちでは,業過が50.7%(前年は46.4%)と最も多く,以下,窃盗の12.2%(同12.0%),覚せい剤取締法違反の11.1%(同13.3%),道交違反の7.6%(同9.9%)の順となっている。覚せい剤取締法違反で公判請求された人員は,55年(89人),56年(101人),57年(148人)と逐年増加していたが,58年(126人)にはやや減少した。