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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第2章/第5節 

第5節 殺人事犯女子受刑者の特性

 本節では,女子暴力犯罪の中でも,検挙人員の変動が少なく,女子比の比較的高い殺人事犯について,女子刑務所の実態調査の結果から,その特徴を見ることとする。
 II-53表は,殺人事犯女子受刑者の身上特性を示したものである。年齢層別構成比を見ると,30歳代が42.2%で最も多く,以下,40歳代の23.6%,20歳代の21.6%,50歳代の9.5%などの順となっている。知能程度では,知能指数79以下の者が62.8%と,知能指数の低い者が多い。また,教育程度は,義務教育修了者が60.3%で最も多いが,高校卒業以上の者も20.6%を占めている。犯行時の職業の有無を見ると,59.3%の者は職業についているが,その職種では,接客サービス業従事者及び風俗営業従事者などが多い。

II-53表 殺人事犯女子受刑者の身上特性

 次に,殺人事犯女子受刑者の前歴等について見ると,前歴のない者が83.4%と著しく高く,刑務所への入所回数も初めての者が97.5%となっている。
 殺人事犯女子受刑者の犯行時の生活状況等を見ると,II-54表のとおりである。

II-54表 殺人事犯女子受刑者の生活状況

II-55表 殺人の被害者別人員

 犯行時の配偶関係では,内縁関係を含む有配偶者が78.9%となっている。
 結婚回数では,1度の者が46.2%で最も多いが,2・3度の者も43.7%とかなり多く,さらに,4度以上の者が5.0%も見受けられる。子供の有無について見ると,7割強の者が子供を有している。また,主たる生計維持者を見ると,本人自身が生計維持者である者が46.7%と最も多い。
 II-55表は,殺人事犯女子受刑者と被害者との関係を見たものである。被害者が夫(内縁を含む。)である場合が36.7%と最も多く,以下,子供,愛人関係等と続き,殺人の98.5%が面識のある人間関係の中で発生していることが特徴的である。
 殺害の動機及び原因等については,殺人事犯女子受刑者と被害者との関係により,それぞれ異なる特徴を示している。主なものを見ると,[1]夫が被害者の場合は,夫に酒乱,暴力,ギャンブル,浮気など問題のある者が多く,複雑な対人関係の不和・かっとうによるえん恨・し,っとなどの動機を示す者が少なくない(67.1%)。[2]子供が被害者の場合は経済的困窮や家庭不和が背景にある心中事件が過半数を占めている(55.3%)。[3]親が被害者である場合は,6割が家庭の不和・かっとうとなっている。