前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和56年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 公的研究から見た特質

 ドイツ連邦共和国司法省の委託研究「ドイツ連邦共和国における銀行強盗」(DieterSchubert及びVolkerMay,1972年)によると,データは古いが,我が国の調査結果と共通する金融機関強盗の特質が示されている。
 銀行強盗の発生時間帯について見ると,開店直後及び閉店直前以外の開店中が50.8%で最も多いが,時間帯の幅を考慮した場合,「閉店直前」の28.6%が発生ひん度において最も高いとされており(II-48表),また,店舗職員数について見ると,職員数が多くなるにつれて発生ひん度がおおむね減少している(II-49表)。そのほか,曜日別では金曜日,月別では12月に最も多く発生し,行為類型では「熟慮(計画的)行為」が93.6%,特定の銀行を選択した者が89.6%を占め,その理由は「逃走の可能性が高い」が34.6%であり(ただし,「職員数が少ない」の57.1%が最も多い。),下見をした者が84.8%,覆面等をして侵入した者が48.4%,犯行失敗の理由では「職員の抵抗」が70.1%であるなど,我が国における前記調査データと興味ある類似性を示している。ただ,防犯設備状況を見ると,非常通報装置等の「電気的防犯設備」すらない店舗が64.6%であり,防犯カメラ等の「撮影監視装置」を設置した店舗は皆無であった。しかし,最近では,特に撮影監視装置の設置状況が著しく改善された模様であり,それが金融機関強盗の発生件数の減少と検挙率の上昇に寄与したとされていることは,前記のとおりである。

II-48表 金融機関強盗の発生時間帯ドイツ連邦共和国(1964年〜66年)

 防犯カメラ等の撮影監視装置の設置が,強盗の発生件数の減少と検挙率の上昇をもたらすことは,アメリカでも報告されている。司法省の資料(「強盗事件の焦点」,1979年)によると,商業強盗(スーパー等一般商業施設の強盗)に関するものであるが,シアトル市における警察指導による「隠しカメラプロジエクト」の実施の結果,隠しカメラが設置された区域における強盗事件の検挙率は55%(設置されていない区域では25%,以下同じ。),有罪率は48%(19%)になり,月間発生件数は38%減少(6.7%増加)したという。

II-49表 被害金融機関の店舗職員数ドイツ連邦共和国(1964年〜66年)