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 昭和55年版 犯罪白書 第4編/第2章/第2節/3 

3 処遇の推移

(1) 救護の措置
 保護観察付執行猶予の言い渡しを受けた者のうち,適当な住居や職業のないなどの事由がある者については,その裁判確定後はもちろん,裁判確定前であっても,保護観察所は,更生保護会に宿泊保護を委託することができる。IV-27表は,各年末現在において,更生保護会の施設で宿泊保護を受けている保護観察付執行猶予者並びに同未確定者の人員を,昭和35年以降50年まで05年ごと及び50年以降の各年について見たものである。宿泊保護を受けている保護観察付執行猶予者は,35年末に51人,40年末45人,45年末は34人に減少したが,50年以降は,100人前後が宿泊保護を受けている。

IV-27表 更生保護会委託中の保護観察付執行猶予者等の人員

(2) 保護観察の仮解除
 保護観察付執行猶予者については,地方更生保護委員会の決定によって保護観察を仮に解除することができるが,本人の行状により再び保護観察を行うことを相当と認めるときは,同委員会は仮解除を取り消すことができる。昭和30年以降50年までの5年ごと及び51年から54年における仮解除及び仮解除取消し等の推移を見たのが,IV-28表である。30年以降,仮解除決定人員が次第に増加するとともに,年末現在仮解除中の人員,仮解除のまま期間が満了する者の人員も増加し,54年には1,704人について仮解除の決定がなされ,同年末仮解除中の者2,077人,同年中に仮解除の状態で期間満了した者1,187人を数えるに至っている。

IV-28表仮解除決定人員等

 次に,昭和45年,50年及び54年に仮解除の決定を受けた者について,執行猶予の期間別に,執行猶予の期間に対する仮解除までの保護観察実施期間の累積百分比を見ると,IV-29表のとおりであって,部分的に例外はあるにせよ,最近になるにしたがって,比較的早期に仮解除の決定を受ける者の割合が増加していることが認められる。これを,執行猶予期間に対する保護観察実施期間50%以内の者の割合で見ると,執行猶予期間の2年以下においては,45年に8.3%であったが,54年には10.4%に増加し,3年以下においては,45年の2.9%から54年の21.6%に,4年以下においては,45年の4.7%から54年の27.9%に,5年以下においては,45年の10.0%から54年の37.2%に,それぞれ増加している。

IV-29表 執行猶予期間に対する仮解除決定までの保護観察実施期間別人員累積比

(3) 所在不明
 昭和29年の年末現在においては,所在の明らかでない保護観察付執行猶予者は170人で,同日現在の保護観察付執行猶予者を100とする比率は7.2%であったが,その後,所在不明者の比率が逐年増加し,37年末においては15.4%(3,646人)となった。その後は,IV-30表に見るように,ほぼ逐年減少し,54年末においては7.7%(1,819人)となっている。

IV-30表 保護観察付執行猶予者の所在不明人員及び所在不明率

IV-31表 保護観察付執行猶予者の終了事由別終了人員等

(4) 執行猶予の終了
 昭和29年以降の各年について,保護観察の終了事由別に保護観察付執行猶予者の終了人員を見ると,IV-31表のとおりである。保護観察付執行猶予者の場合,遵守事項を遵守せず,その情状が重いときにも,執行猶予は取り消されるが,これによって取り消された者の数は多くはないものの,49年には50件を超え,54年には113件になっている。年間の保護観察終了者総数に占める執行猶予取消人員の割合(本節では「取消率」という。)を見ると,33年までは著しく高いが,その後においては,34年の38.6%から多少の起伏を見ながらも次第に下降し,45年には20.7%に減少した後,再び上昇に転じて,54年には31.3%となっている。ちなみに,保護観察終了時において無職である者(家事従事者及び学生・生徒を除く。)と取消率の推移を見ると,IV-6図に示すとおり,取消率は無職者の比率とほぼ平行して増減している。

IV-6図 取消率及び保護観察付執行猶予終了人員中無職者の比率の推移