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 昭和54年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/3 

3 矯正施設における精神障害者

 昭和53年における刑務所及び少年院の収容者中の精神障害者は,IV-28表のとおり,刑務所,少年院共,収容人員の1割弱である(これは過去10年間の最低値であり,最も高かったのは,刑務所では46年の15.0%,少年院では44年の18.3%である。)。また,精神障害者の内訳では,精神薄弱者が最も多く,刑務所,少年院共全収容者の5%近くを占めている。

IV-28表 矯正施設収容中の精神障害者(昭和53年12月20日現在)

IV-29表 M級(精神障害者)受刑者の収容分類級別再入率

 精神障害の程度が著しく,相当期間,集中的に治療を必要とする受刑者や少年院収容者は,原則として,医療刑務所又は医療少年院を中心に移送している。このうち,行刑施設における精神科病床数は,昭和54年4月1日現在で357床である。軽度の障害者,軽快後の予後観察中の者及び釈放(出院)前処遇中の一部の者に対しては,一般の刑務所又は少年院において,医療を受けるほか,養護処遇にふさわしい作業,生活指導,カウンセリング,グループ・ワークなどの矯正処遇が行われている。
 次に,昭和49年に釈放された精神障害のある受刑者(M級)646人について,その後53年末までの4年ないし5年の間の再入率について見たのが,IV-29表である。M級受刑者のほぼ半数(49.7%)が再入所しており,その他の分類級の受刑者の場合の42.2%と比べて再入率が高い。M級受刑者の中でも,特に,Mx級(精神薄弱)とMy級(精神病質)の再入率(それぞれ61.2%と46.0%)がMz級(精神病等)の者に比べて高くなっている。これら精神障害のある受刑者に対する施設内処遇及び社会内処遇の一層の充実が望まれる。