前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第五章/三/1 

三 更生緊急保護

1 更生緊急保護の対象者

 保護観察の対象にならない次の五種の犯罪者に対しては,その再犯の防止のために,更生緊急保護法による更生保護が行なわれている。すなわち,(イ)懲役,禁錮または拘留につき刑の執行を終わった者(満期釈放者,仮出獄で出た刑期満了者),(ロ)懲役,禁錮または拘留につき刑の執行の免除を得た者,(ハ)懲役または禁錮につき刑の執行猶予の言渡を受,その裁判が確定するまでの者,(ニ)懲役または禁錮につき刑の執行猶予の言渡を受け,保護観察に付されなかった者,および(ホ)訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者(起訴猶予者)である。
 この更生保護は,本人が刑事上の手続による身体の拘束を解かれた後,六カ月以内のあいだに,親族・縁故者等からの援助や,公共の衛生福祉その他の施設からの保護を受けることができない場合,またはその援助や保護だけでは更生できないと認められる場合に,緊急の措置として行なうものであるから,措置の性質は保護観察中の者に対する応急の救護・援護とほぼ同じであるが,この五種類の者は保護観察中の者とちがって法的には完全な自由を認められているので,本人の意思に反して行なうことはできない。実際は本人の申出に基づいて行なうことになっている。実施主体は,応急の救護の場合と同じく保護観察所の長である。保護観察所の長は本人から申出があった場合に,その要否を判断し,必要と認めた場合に限りその保護を与える。