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 昭和52年版 犯罪白書 第2編/第1章/第2節/2 

2 刑の執行猶予

(1) 執行猶予の現状
 II-10表によって,懲役・禁錮の確定判決を受けた者のうち執行猶予となった者の比率を見ると,昭和51年では,懲役が60.3%,禁錮が84.3%となっている。
 II-12表は,執行猶予の言渡しを受けた者の該当法条別人員及び保護観察言渡人員を見たものである。昭和51年では,いわゆる初度目の執行猶予(刑法25条1項)の言渡しを受けた者が執行猶予者の95.9%を占めているが,このうちで,裁量的に保護観察に付された者は13.6%である。

II-10表 懲役・禁錮の刑期等別人員(昭和47年,49年,51年)

II-11表 罰金の金額等別人員(昭和49年,50年)

 刑法犯の主要罪名について,昭和50年に通常第一審で懲役又は禁錮の言渡しを受けた者のうち執行猶予に付された者の人員とその比率を見ると,II-13表のとおりである。執行猶予率の高いのは,贈賄の95.8%,収賄の94.0%,公務執行妨害の85.2%などであり,その率の低いのは,殺人の29.1%,強盗の35.4%などである。また,執行猶予のうち,保護観察に付された者の割合は20.1%であるが,罪名別に見ると,強盗,強姦,強制わいせつ・強姦致死傷などが高率となっている。
 昭和51年中に執行猶予の言渡しを受けた人員について,その猶予期間を見ると,II-14表のとおりである。猶予期間3年以上4年未満の者が最も多く,総数の59.7%を占めている。
 また,昭和51年中に執行猶予の言渡しを受けた人員を,懲役・禁錮の刑期別に見ると,II-15表のとおりである。懲役・禁錮で執行猶予の言渡しを受けた人員の79.0%までが刑期1年以下のものである。

II-12表 執行猶予確定人員中の該当法条別人員及び保護観察言渡人員(昭和50年,51年)

II-13表 主要罪名別刑法犯通常第一審執行猶予率(昭和50年)

(2) 執行猶予の取消し
 最近3年間について,刑法犯及び特別法犯の執行猶予の言渡しを受けた人員,執行猶予の取消しを受けた人員,取消率及び取消事由を見たのが,II-16表である。ここにいう取消率とは,ある年次において,執行猶予の取消しを受けた人員を,その年次における執行猶予の言渡しを受けた人員で除した値であって,正確な意味での取消率とは言えないが,大体の傾向を知ることはできるであろう。昭和51年の執行猶予の取消率は,刑法犯で10.5%,特別法犯で7.9%,両者の合計では10.0%となっている。執行猶予の取消率は,48年以降わずかずつ上昇してきているが,51年における特別法犯の執行猶予の取消率が前年よりかなり高くなっているのが目立つ。

II-14表 執行猶予確定人員の猶予期間別人員(昭和51年)

II-15表 懲役・禁錮の執行猶予確定人員の刑期別人員(昭和51年)

II-16表 刑法犯・特別法犯の執行猶予の確定・取消・取消事由別人員(昭和49年〜51年)

 取消事由別に見ると,再犯による自由刑の実刑確定等を理由とする必要的取消し(刑法26条1号)が最も多く,昭和51年には,執行猶予取消総数の94.7%を占めている。