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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第3章/第1節/5 

5 日  本

 I-84表は,我が国における1960年から1975年までの業務上(重)過失致死傷を除く刑法犯の発生件数の推移及び1975年における罪名別構成比を見たものである。

I-84 表主要罪名別刑法犯発生件数     日本

 発生件数の総数は,1971年以降減少傾向にあったが,1974年から再び増加傾向に転じた。1975年の罪名別発生件数を,1960年のそれを100とする指数で見ると,窃盗及び放火がほぼ横ばいの傾向にあるほかは,すべて減少しており,最も減少の著しい犯罪は恐喝で35,次いで強盗の37,横領の48,傷害・同致死,暴行の50などとなっている。
 1974年からの刑法犯発生件数の増加は,主として万引き,オートバイ・自転車盗等の軽微な事犯を中心とする窃盗の増加によるところが大きく,その他の犯罪には概して大きな変動はないと言える。しかし,犯罪の内容を見ると,暴力団犯罪,過激派集団犯罪の悪質・凶悪化,動機や態様の悪質な殺人事件の多発などに現れているように,犯罪が量的に減少しながらも悪質化していることに注目する必要がある。別に詳述しているように,暴力団犯罪は,対立抗争事件において凶悪化しており,過激派集団犯罪も爆発物事犯,内ゲバ事犯を中心にその手段・態様がより計画的で凶暴・残忍なものとなってきており,市民に不安を与えている。また,少数ながら,殺人,強盗,強姦等の凶悪犯を繰り返す危険な常習犯罪者が絶えないことも問題であろう。
 刑法犯以外では,覚せい剤を主とする薬物関係犯罪が近年激増しており,新たな問題となっている。なお,銃器による犯罪について各国の実情を比較する際の参考資料として,我が国の1975年における銃器を用いた犯罪の占める比率を罪名別に見ると,殺人では5.3%,強盗では0.8%,傷害では0.1%となっており,既に述べた欧米各国に比べると,その割合はかなり低いことがわかる。