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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第3章/第1節/4 

4 フランス

 フランスについては,主な資料を入手し得た1973年以降の動向を中心に検討する。

I-82表 主要刑法犯(重罪・軽罪)発生件数          西ドイツ

 I-83表は,フランスにおける1973年から1975年までの主要刑法犯(麻薬犯罪等の特別法犯を含む。)の発生件数の推移及び1975年における罪名別構成比を見たものである。
 1975年の罪名別発生件数を,1963年のそれを100とする指数で比較可能な罪種だけについて見ると,最も増加の著しい犯罪は強盗で804となっており,次いで詐欺が755,小切手犯罪が445などとなっている。この犯罪統計のほかに国際刑事警察機構の国際犯罪統計(International Criminal Statistics,I.C.P.O.,1965〜1972)をも参照すると,フランスにおける最近の犯罪現象の特徴として,[1]犯罪が一般に増加傾向にあること,[2]詐欺,小切手犯罪等の知能犯や強盗の増加が著しいこと,[3]性犯罪は全体として減少傾向にあり,強姦,強制わいせつは最近数年間は横ばい状態にあること,[4]麻薬犯罪が1960年代後半から急激な増加を示していることなどが挙げられる。
 フランスでは,最近,銃器を用いた強盗が増加し,安易に人命を奪う事犯が多発している。この種事犯は1975年では3,523件を数え,強盗事件全体の15.8%を占めており,また,その対象として銀行,ガソリンスタンド,郵便局等がねらわれることが多く,その犯罪者の63.6%が25歳未満の若年層によって占められている。ちなみに,殺人事件において銃器が用いられたものの比率を見ると,52.7%となっている。
 犯罪発生率を地域別に見ると,パリその他の大・中都市では,小都市に比べて,強盗,殺人などの凶悪犯の発生率が高いが,強姦の発生率にはさほどの地域差は認められない。
 麻薬濫用の風潮は,麻薬を入手するために行う薬局強盗の増加をもたらしている。1975年における麻薬犯罪検挙人員は,1968年のそれの約15倍にも達しており,また,1975年の検挙人員中の52.9%が20歳未満の者となっている。同年における使用麻薬の64.8%は大麻であり,L.S.D.の12.7%がこれに次いでいる。最近では,麻薬事犯は一般化,若年化し,また,都市だけではなく地方にも拡散していると言われる。
 爆発物事犯が多発しており,1975年ではその発生件数は1,291件となっている。そのうち,339件が公的財産を対象とするもので,他が私的財産を対象とするものである。重大事犯のほとんどは,政治的・経済的・社会的動機に基づくもので,過激派の犯罪もこの中に含まれている。

I-83表 主要刑法犯(重罪・軽罪)発生件数  フランス

 フランスでも外国人犯罪が多く,1975年では違警罪を含む全犯罪中の13.5%を占めており,罪種としては麻薬取引,身分証明書偽造,強姦,強盗などが多くなっている。