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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/1 

第2節 強姦罪

1 概  況

 我が国における昭和21年から51年までの強姦の発生件数及び検挙人員の推移は,I-8図のとおりである。その特徴を挙げると,第一に,強姦発生件数は,30年代に急激に増加して39年には6,857件に達したが,40年代からは減少を続けている。第二に,検挙人員総数は,33年に8,569人を記録してピークに達し,34年からは減少したが,39年には再び増加し,40年には8,444人となって第二のピークを記録した。しかし,41年からは急激に減少している。ところが,成人の検挙人員の推移を見ると,33年以降も起伏を示しながら増加を続け,43年に4,441人となってピークに達した後,漸く減少に転じている。したがって,検挙人員総数中に占める成人の割合は,逐次増加し,33年は46.3%,43年は57.5%,51年は69.8%に達している。

I-8図 強姦発生件数・検挙人員の推移(昭和21年〜51年)

 このような推移から,強姦は少年の犯罪から成人の犯罪へと変わりつつあり,また,その犯行態様において,輪姦ないし共犯型から単独犯型へと変化しつつあると言える。
 法務総合研究所においては,最近における成人の強姦事件の実態をは握し,加害者及び被害者の諸特性を明らかにするため,昭和30年以降において強姦事件の発生率の高い地域を管轄する東京・水戸・神戸・津・山口・福岡・宮崎・福島・札幌・高知の各地方検察庁10庁を選び,51年中に対象庁で起訴又は不起訴処分に付された犯行時成人の強姦事件(強姦,同未遂,強姦致傷,同致死,強盗強姦,同致死をいう。)の被疑者全員について,事件記録に基づく調査を行った。調査対象被疑者総数は424人(うち,女性1人)であり,被害者は343人であった。

I-57表 罪名別人員

 対象被疑者の罪名別人員及び構成比は,I-57表のとおりで,強姦,強姦未遂及び強姦致傷が412人,強盗強姦は12人である。また,強姦致死及び強盗強姦致死には該当がなかった。
 対象被疑者の罪名別処分内容は,I-58表のとおりであって,対象者424人中,244人(57.5%)が公判請求に付され,強盗強姦では,全員が公判請求となっている。強姦,強姦未遂及び強姦致傷の中では,強姦致傷の公判請求の割合が最も高く,81.4%に及んでいる。
 強盗強姦(12人)は,罪質をやや異にしており,別途の考察を要するものがあり,また,女子の1人は,強姦未遂の共犯者であり,告訴取消しによる不起訴処分に付されていることでもあるので,以下においては,以上の13人を除く411人の対象者について,調査結果を報告することとする。