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 昭和51年版 犯罪白書 第3編/第1章/第7節/2 

2 少年の保護観察

 保護観察の一般的概況については,第2編第4章第3節で述べたので,ここでは,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,更に若干の考察を加える。

(1) 新受及び年末現在人員

 昭和50年中に保護観察所が新たに受理した保護観察処分少年は2万1,384人で,前年に比べて1,442人(7.2%)増加している。この増加は,交通事件及び一般事件の双方の対象少年に見られる。同年末の人員は3万7,552人で,前年に比べて1.0%減少している。
 一方,少年院仮退院者については,同年の新受人員は1,593人で,前年よりも219人(12.1%)減少しており,また,同年末の人員は2,178人となり,前年に比べて15.2%減少している。

(2) 年齢層別及び性別人員

 昭和50年中に受理した保護観察処分少年について,年齢層別及び性別人員を見ると,III-77表のとおりである。年少少年(15歳以下),中間少年(16歳及び17歳),年長少年(18歳以上)が,それぞれ総数中に占める割合は,年少少年が7.5%,中間少年が36.4%,年長少年が56.0%あり,この割合は,前年と比べて大差はない。

III-77表 保護観察処分少年(新受)の性別・年齢層別人員(昭和49年・50年)

 性別では,女子が800人で総数の3.7%を占め,前年に比べると82人(11.4%)増加している。
 次に,少年院仮退院者について見ると,III-78表のとおりである。まず,年齢層別では,総数中に占める割合は年少少年3.4%,中間少年28.3%,年長少年68.3%となっていて,年長少年の占める割合が高い。しかし,前年比では,中間少年の占める割合が上昇し,年長少年のそれが低下している。

III-78表 少年院仮退院者(新受)の性別・年齢層別人員(昭和49年・50年)

 性別では,女子が144人で総数中の9.0%であり,前年に比べて42人(22.6%)減少している。

(3) 保護観察の成績等

 ここでは,保護観察終了時の成績及び保護観察期間中の再犯状況を,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に分けて検討する。

ア 保護観察処分少年の成績等

 昭和50年中に保護観察を終了した保護観察処分少年について,その保護観察開始時の年齢を前記年齢区分に従って分類し,それぞれの終了時の成績を見たのが,III-79表である。良好な成績で保護観察を終了した者の占める割合は,年少少年55.7%,中間少年63.5%,年長少年67.1%,また,不良な成績で終了した者の占める割合は,それぞれ,19.6%,11.3%,5.6%となっていて,一般に,低年齢層ほど成績が悪い傾向にある。これは主として,低年齢層において非行が早期に発現し処遇困難な者が少なくないことによるものと思われる。

III-79表 保護観察処分少年の年齢層別・終了時成績別構成比(昭和50年)

 次いで,保護観察回数と終了時の成績との関係を見ると,III-80表のとおりである。良好な成績で保護観察を終了した者の占める割合は,初回66.1%,2回43.2%,3回以上26.0%,反対に,不良な成績で終了した者の占める割合は,それぞれ8.5%,16.1%,24.7%となっていて,以前に保護観察の経験を有する者,しかも,その経験回数の多い者ほど,保護観察終了時の成績が顕著に悪くなっている。保護観察回数の多い者は,素質・環境面に多くの負因を持ち,非行を繰り返しては家庭裁判所へ送致されているので,この種の少年については,処分の選択や処遇の内容等の面でなお検討の要があると思われる。

III-80表 保護観察処分少年の保護観察回数別・終了時成績別構成比(昭和50年)

 保護観察処分少年のうち,どれほどの者が保護観察期間中に再犯によって保護処分又は刑事処分を受けたかを見たのが,III-81表である。保護観察処分少年の保護観察期間及び期間別人員等を考慮して,保護観察開始後3年以内の再犯状況に限定する。再犯処分の累積比率を見ると,最近では,保護観察に付された当年中に約1%,2年目以内に4%〜5%,3年目以内に10%〜11%の者が再犯処分を受けている。この再犯処分率を年次別に比較してみると,過去に見られた減少店向が,昭和49年ころから横ばいないし増加に転じているように見受けられる。

III-81表 保護観察処分少年の保護観察期間中における再犯処分累積比率(昭和41年〜50年)

イ 少年院仮退院者の成績等

 昭和50年中に保護観察を終了した少年院仮退院者について,同じく,年齢層別に終了時の成績を見たのが,III-82表である。良好な成績で保護観察を終了した者の占める割合は,各年齢層とも22%〜23%で大差はなく,全般に低い。しかし,不良な成績で終了した者の占める割合は,年少少年39.2%,中間少年33.2%,年長少年21.3%で,全般に成績不良の者の占める割合が高く,特に,低年齢の者ほど顕著に成績が悪くなっている。

III-82表 少年院仮退院者の年齢層別・終了時成績別構成比(昭和50年)

 保護観察回数と終了時の成績との関連は,III-83表に示すとおりである。以前に保護観察を受けたことがある者は,総数の48.0%を占めていて,その成績は全般的に不良である。一つの特徴的傾向としては,良好な成績で終了した者の占める割合が,保護観察回数が多い者ほど低下しているのに対して,不良な成績で終了した者の割合は,保護観察回数のいかんにかかわらず,25%前後の高い割合を示していることである。

III-83表 少年院仮退院者の保護観察回数別・終了時成績別構成比(昭和50年)

 次に,保護観察期間中に再犯によって新たに保護処分又は刑事処分を受けた状況を見ると,III-84表のとおりである。少年院仮退院者に対する保護観察期間及びその期間別人員等を考慮して,保護観察開始後2年以内の再犯に限定する。最近の再犯処分の累靖比率を見ると,仮退院の当年中に4%〜5%,2年目以内で約14%〜17%を占めており,その比率は高い。再犯による処分の累積比率を年次別に比較すると,保護観察処分少年の場合と同様,全般に低下傾向にあったものが,昭和49年ころから上昇に転じているように見受けられる。

III-84表 少年院仮退院者の保護観察期間中における再犯処分累積比率(昭和41年〜50年)