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 昭和50年版 犯罪白書 第2編/第4章/第5節/3 

3 犯罪予防活動

 更生保護は,その当面の目標を犯罪をした者の再犯防止に置くため,個別処遇を基調にした保護観察の実施がまず制度の中心となり,更生緊急保護の措置が保護観察を補充する形で機能することで,個々の対象者に対する処遇の体系として成立している。ところで,これら個別的処遇法のほかに,犯罪予防を直接の目的として保護観察所が地域社会において行う犯罪予防活動がある。すなわち,保護観察所がつかさどる事務の一つとして,「犯罪の予防を図るため,世論を啓発指導し,社会環境の改善に努め,及び犯罪の予防を目的とする地方の住民の活動を助長すること。」(犯罪者予防更生法18条)が存在する。
 犯罪予防活動に関するこの発想は,犯罪対策は,単に個人を対象とした処遇の実施によるだけでなく,社会全体の改善を目指す施策に基盤を置くことが必要であるとの考え方に発するものである。
 このように,犯罪予防活動は,保護観察の実施,更生緊急保護の措置とは別に,独自の分野を持つものとして,犯罪者,非行者にだけではなく,広く一般人に対する働き掛けや,地域社会を更生保護のために再組織する方向にも関連するものとされるに至った。
 もとより,犯罪予防に直接,間接に関連する機関・団体は多く,その活動は,政府機関だけに任せずに,社会教育,学校教育,青少年の健全育成,不良文化財の規制その他の関連する対策の総和として解決が図られなければならない。
 このように,犯罪予防活動は,保護観察所の所掌事務の一つとされているが,活動の主体はあくまでも地域の住民であり,保護観察所が行う犯罪予防活動は,世論の啓発指導,地方の住民の活動の助長という形態で行われるものである。そして,更生保護における犯罪予防活動の展開に当たって,保護司には,地域社会の代表者として,自ら世論を啓発し,地域社会の浄化を図る役割が期待され,BBS会員,更生保護婦人会員が保護司及び保護司の組織に協力し,地域住民のすべてが,犯罪の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深めるようにこの活動が推進され,住民参加による幅広い継続的活動にまで高められることが要請されよう。