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 昭和50年版 犯罪白書 第2編/第4章/第1節/1 

第1節 更生保護25年の歩み

1 概説

 今次大戦後における犯罪の激増と罪質の悪化及び刑務所の極度の過剰拘禁状態を背景に,犯罪者の施設内処遇と社会内処遇との弾力的な連携を確立し,再犯防止を図るための対策の一つとして,昭和24年5月犯罪者予防更生法が公布され,同年7月1日に施行され,以来四半世紀が経過した。この法律は,犯罪をした者の改善及び更生を図るために,保護観察の制度を定め,仮釈放の手続を改めて保護観察と結び付くいわゆるパロール制度を新たに導入したところに特色があるとされており,更生保護の基本法とされるものである。
 これとともに,昭和25年に廃止された司法保護事業法に代わるものとして施行された更生緊急保護法及び保護司に関する基本的事項を規定した保護司法がそれぞれ25年5月施行され,犯罪者の社会内処遇が保護観察所によって統一的に実施されることとなり,ここに制度としての更生保護がほぼ整った。その後,28年に刑法等の一部を改正する法律が施行されて刑の執行猶予の条件が緩和され,再度の執行猶予を認め,その猶予中の者を保護観察に付する制度が定められ,初めて懸案のアダルト・プロベーションへの道が開かれた。更に,翌29年に刑法の一部を改正する法律が公布され,初度目の執行猶予者に対しても,裁量的に保護観察に付することが可能になったので,保護観察の仮解除の制度を導入し,執行猶予者にふさわしい独自の保護観察制度を内容とした執行猶予者保護観察法が29年7月1日から施行され,執行猶予者に対する保護観察体制が整備された。
 また,昭和32年4月1日から施行されていた売春防止法が,33年3月25日一部改正され,補導処分が新設されるに及び保護観察の対象に婦人補導院仮退院中の者が,更生緊急保護の対象に補導処分の終了者が,それぞれ,新たに加えられた。
 このようにして,犯罪者予防更生法の施行に始まる一連の立法と機構の改革を経て,ほぼその体制を整えた更生保護は,検察・裁判・矯正と並んで国の刑事政策の一環を形成するに至った。そして,我が国の更生保護は,現在,矯正施設からの仮釈放の決定及び決定の執行,保護観察少年,仮出獄者及び仮退院者並びに保護観察付執行猶予者に対する保護観察の実施,保護観察を伴わない釈放者,すなわち,刑執行終了者,起訴猶予者,執行猶予者等に対する更生緊急保護の措置の実施等,犯罪者の再犯防止を当面の目標とする諸施策に当たるほか,恩赦の適正な運用もその任務の一つとし,更にまた,犯罪予防のための世論の啓発を内容とする犯罪予防活動もその業務の一部としている。