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 昭和50年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節 

第5節 精神障害者の犯罪

 精神障害者が犯罪を犯した場合,その精神障害のため責任能力がないか,又は著しく低いときには,刑事責任を追及できないか,又は起訴を適当としないことになる。犯罪行為に限らず自傷・他害のおそれのある精神障害者は,精神衛生法の規定に基づき,都道府県知事によって国公立の精神病院若しくは指定病院への入院措置(以下,「措置入院」という。)を執られるか,又は指定医師の訪問指導を受けることになっている。
 刑事政策的立場からは,このような行政上の措置にとどまらず,犯罪を犯した後更に犯罪を繰り返すおそれのある精神障害者等に対しては,司法処分としての保安処分が考えられるのであるが,法務大臣の諮問機関である法制審議会が昭和49年5月に答申した改正刑法草案は,精神障害者に対する治療処分とアルコール・薬物中毒者に対する禁絶処分の2種類からなる保安処分の新設を規定している。